名前の通り、夢を叶えた若き管理栄養士がいる。

安原叶(かのう)さん(26)。昨年、念願だった母校・常葉大菊川(静岡)の野球部寮の管理栄養士になり、寮生活を送る選手たちの体作りを支えている。

昨年の夏の甲子園100回大会に出場した際は帯同し、猛暑の中、「ノーサイン野球」で旋風を起こしたチームをバックアップ。あの感動を再び…と毎日の栄養管理に努めている。

キッチンの前で笑顔を見せる安原さん

おいしく楽しくホッとできるもの

安原さんの仕事は、朝と夜の食事の献立作り。朝5時に起床し、5時半には寮の食堂に到着。盛りつけや配膳など調理補助も行い、夕食の片付けを終えるのは午後9時を回る。「ケガをせず、パフォーマンスが上がるような食事」を考えながら1日のほとんどを食堂で過ごす日々を、「とても楽しい」と充実感いっぱいの表情で語った。

献立の作り方は独特だ。1週間分などまとめて立てるところが多い中、安原さんは午前中にその日の夕食と翌日の朝食メニューを考える。気を付けるのは「朝夕のメインとなる食材が学食のものとかぶらないようにすること」。あとは、天候や練習強度、疲労感など選手の状態を見ながら食材を決め、調理師の戸塚彰二さん(48)に依頼する。「家で、お母さんが作るような感じ」。栄養面だけでなく、選手がおいしく楽しく、ホッとできるものを考えている。

献立表はなく、ホワイトボードにメニューを書くスタイル

この日の夕食メニューは、選手のリクエストに応えたものだった。

愛情たっぷり♡オムライス
軟骨からあげ
冷製パスタ(アボカド入り)
クラムチャウダー
オレンジ

チキンライスは500gの大盛りだ。

1皿500gずつ盛って並べていく

自分で考え、自分で補給するように

選手には1日に4000~4500kcalのエネルギーを摂るよう勧めているが、基本的には自主性に任せている。

全部員に対しての栄養講習会は年2回実施予定。食堂にあるホワイトボードに栄養メモを記し、日頃から食べる意味や摂りたい栄養素を意識させている。神谷建太朗主将(2年)は「足りない分は自分で考えて、牛乳などからカルシウムを摂るようにしている」と説明した。

寮長の山口翼選手(左)と神谷主将

「1年生は『夕食で800gのご飯を食べよう』と自分たちで決めて食べています」と話すのは、新野正汰選手(1年)。まずは体を大きくを目標に、ご飯の量を意識的に増やしているという。

笑顔で元気いっぱいの1年生

また戸塚さんの協力で、午前中の補食として、1人2~3個食べられるようおにぎりを100個程度用意。夕食後の自主練習が終わった後に、夜食として食べられるようご飯、卵、納豆、キムチを常備している。

2年生で食堂に一番乗りした(左から)石川翔登、伊貝十太郎、上原稀大、大澤佳晃、岩堀隼大の各選手

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