「固有感覚」「前庭覚」「触覚」

宮崎氏はその中でも重要な感覚として次の3つを挙げた。実際にトレーニングに入る前に、意味や機能を説明する。

(1)固有感覚

筋肉の各部位にある感覚。筋肉が今どれくらい力を出しているか、関節が今どのような状態かを脳に知らせるセンサー。運動においては、筋肉にさまざまな状況に適応する力を発揮させ、関節の動きを調整する機能。いわゆる「体で覚える」ということに必要な感覚であり、力加減をするのにも必要となる。

(2)前庭(ぜんてい)覚

耳の奥にある前庭器官にあって、体の傾きを把握する感覚。運動においては、平衡感覚といわれるもので、真っすぐ立って、姿勢を保持したり、体のバランスを取ったりするために必要な機能。眼球運動に大きく関与する。また、前庭覚を刺激すると興奮状態になることから、アドレナリンにも関係するといわれる。

(3)触覚

皮膚などにある触覚受容器にあって、触ったものに対し、皮膚などを通じ、感じる感覚。運動においては、ボディーイメージの形成をつかさどる。空間イメージや記憶、意思決定などにも関係するといわれる。

オリンピック協会から贈られた表彰状の前で笑顔の宮崎トレーナー
オリンピック協会から贈られた表彰状の前で笑顔の宮崎トレーナー

23歳の時にオリンピック委員会強化フィジカルコーチに就任し、その後は格闘技、野球、テニス、ゴルフ、サッカーなど、数多くのプロ選手のトレーニングに携わった。さまざまな競技の選手に触れ「パフォーマンスを上げるために、違う観点から見てみたらどうかと思った」と各専門医の話を聞き回った。「目のケガが鎖骨付近の動作に変化をもたらす」「顎(がく)関節、かみ方が首の緊張を引き起こし、体のバランスを崩す」「呼吸器系が胸骨の周辺筋に変化をもたらす」。体の構造を学び、トレーニングを効率良く、効果を生み出すために行き着いたのが「感覚統合」を取り入れたトレーニングだった。

言葉だけを見れば難しく思われそうだが、宮崎氏が紹介するのは身近で簡単な運動である。第1回は感覚統合を取り入れた運動例を1つ紹介したが、次回からは「固有感覚」、「前庭覚」、「触覚」の各感覚を鍛える運動を特集する。(つづく)【取材・構成=久保賢吾】

◆宮崎裕樹(みやざき・ひろき)1970年(昭45)3月26日、千葉県生まれ。23歳の時にオリンピック委員会強化フィジカルコーチに就任。その後独立し、事務所を立ち上げる。K-1、ボクシング、ゴルフ、野球、サッカー、テニス、ラグビー、バレーボール、競輪など数多くの選手のトレーナーを務める。17年からは「Mr.Children」のツアーに同行し、トレーニングや体をケアする。また、小学生を対象とした水泳、陸上、サッカー教室。発達障がい児、発達障がい者の運動教室を都内、神奈川県内で開催する。株式会社「TEAM-MIYAZAKI」、NPO法人「日本フィジカルサポート」の代表を務める。

(2019年7月31日、ニッカンスポーツ・コム掲載)