疑問に思ったことストレートに聞く

昨年末、共通の関係者を通じて、同じ94年生まれの大リーグ・大谷翔平と都内で会食する機会があった。心に残ったのは、ラグビーの練習方法の中にもヒントを探す大谷の姿勢だった。

「学ばなければいけないと思ったのは貪欲さ。栄養面など、自分がうまくなるために、やれることを全部やる。世界のトップ選手が疑問に思ったことをストレートに聞く。僕は自分が正しいと思うことを大事にするタイプだったが、新しいことも試し、だめならやめようと。そう考え始めるきっかけにもなった」

ラグビーW杯に向け、日の丸を背に日本代表をけん引するフランカー姫野和樹(撮影・狩俣裕三)
ラグビーW杯に向け、日の丸を背に日本代表をけん引するフランカー姫野和樹(撮影・狩俣裕三)

W杯イヤーの19年。2月の代表合宿から、1人の先輩への徹底マークが始まった。常に視線の先に置いたのは、同じポジションのリーチ・マイケル。尊敬の念をあえてライバル心に置き換えることで、成長のエネルギーに変えてきた。

「一番好きな人間であり、一番尊敬している選手。ただ、リーチさんもいつまでも代表にいるわけではない。リーチさんのような人間に自分が近づき、超えていけば日本代表も強くなると思う。だから『ライバル』とあえて口にして、練習中からフィットネスで負けないとか、小さなことでもとことん意識しようと。それが、自分自身の成長につながると思っている」

ラグビーW杯に向け、自身のこと、日本代表のことについて思いを語るフランカー姫野和樹
ラグビーW杯に向け、自身のこと、日本代表のことについて思いを語るフランカー姫野和樹

社会人1年目。主将の重圧に押しつぶされ、無力さを知った。部屋で1人涙を流す中で、心に浮かんだのは、恩師である帝京大・岩出雅之監督の教えだった。

「岩出監督が言っていた『失敗してもすぐに起き上がれる選手が一流』という言葉を思い出して、ぴんときた。倒されてもすぐに起き上がり、またチームのために貢献する。自分にとって今でも大切にしている言葉。今回のW杯で、世界の一流に挑んでいきたい」。

真っ向からぶつかる。倒れても立ち上がり、また体を張る。桜のジャージーの誇りを、プレーにこめる。

(2019年8月30日、ニッカンスポーツ・コム掲載)