アイススラリーと手掌冷却

国立スポーツ科学センター研究員の中村真理子氏は、限られた時間の中で効果的に行うことが求められる競技現場での暑さ対策に、「アイススラリー」と「手掌冷却」を推奨している。

「アイススラリー」は体の内部冷却が目的で、スポーツドリンクをシャーベット状にしたものを摂取する。「手掌冷却」は体の外部冷却が目的で、13~15度の氷水で前腕部分を冷やす。中村氏は「深部体温の過度な上昇を防ぐこと」をポイントに挙げた。日本の夏は欧米に比べ、温度だけでなく湿度も高い。中村氏は「2つの冷却方法は、日本の夏のような高温多湿にも効果的」としている。また、運動前の暑さ対策としては、選手だけでなく誰にでも有効だとしている。

ミスト噴霧器、かぶる日傘・・・数々の対策を検証中

大会組織委員会も東京都も、観客の自発的な「暑さ対策」を期待する。7月30日の組織委理事会では「暑さ対策」に関する意見が噴出。「会場入り口で並ぶのが心配」「水分補給が重要」「医務室が狭いのでは」などの中には「自己責任」という意見まであった。武藤敏郎事務総長は「自己責任とは言わないが、暑さ対策に決め手がないのは確か。対策を周知することも我々の役割」と話した。

入場時の待ち時間短縮、ミスト噴霧器や大型扇風機の設置、涼感グッズ配布、医療体制の整備からかぶる日傘まで…。組織委や東京都は今夏のテスト大会で数々の検証をしている。暑さ対策は、輸送と並ぶ今大会の大きな課題。本来は禁止されているペットボトル飲料などの持ち込みを検討するなど、きめ細かな施策を積み重ねて猛暑に備える。

観客自身の対策も必須

もっとも、最大の効果が期待できるのは観客自身の「対策」。検証テストのビーチバレー会場では入り口に大きく「気温」が張り出され、DJも「水分補給を」と連呼した。「体調管理や帽子着用など、観客のみなさんにも気をつけていただければ」と東京都環境局の若林憲担当部長。組織委の中村英正GDOも「来場される方への暑さ対策の周知徹底も大切」と話す。自らの身は自らで守る-。人任せではない暑さ対策こそ、応援に集中するカギだ。

(2019年8月8日、ニッカンスポーツ・コム掲載)