1日練習2時間、週休2日のガイドライン

スポーツ庁は部活動改革にも取り組んでいる。昨年3月にガイドラインを制定。1日の練習時間は2時間(休日は3時間)とし、週休2日を掲げた。ところが、野球界からは「チームによっては何百人もいる。2時間で終わるのは難しい」と反論が出た。「チーム力が下がる」という声も根強い。ここでも、その考えは絶対ではないと切り返す。

 もっと効率的に練習できるのでは。部活を短くすればどうなるか、誰も検証していない。みんな「弱くなる」「下手になる」と言うが、間違いなく、やる気は増す。練習に対する集中力も上がる。何より、ケガが少なくなる。そういう意味では、選手層の厚さにもつながっていくと思う。

大局から続けた。

 部活以外にも、学業はじめ、いろんな活動に時間を費やせる。総合的に子どもを成長させていく、教育していくという観点は絶対に必要。

疑問が湧く。自身は中学・高校の頃、1日、どれぐらい練習していたのか。1日2時間の練習で金メダリストになれるのか。「多い時は1日4時間、週休1日。でも、私は部活ではなくて、スイミングクラブに月謝を払い、好きで行っていたので」と苦笑いで答えた。「水泳は(幼少期に)ある程度、集中してやらないといけない」とも言った。ただ、どんなに練習しても、全員が世界で戦えるわけではない。世界の頂点に立ったからこそ、身をもって分かっている。少なくとも「そのスポーツが好きで始めたのに、練習が休みだと喜ぶ。部活が苦痛でしかなくなっている」という事態は改善すべき。それには、指導者の改革が必要だと続けた。(つづく)

◆鈴木大地(すずき・だいち) 1967年(昭42)3月10日、千葉県習志野市生まれ。7歳で水泳を始め、千葉・市船橋高3年のロス五輪に出場。順大4年時のソウル五輪100メートル背泳ぎは、予選3位から決勝で潜水スタートのバサロを伸ばす秘策で逆転、日本水泳界に16年ぶりの金メダルをもたらした。92年の引退後は米国でコーチなどを経験し、00年から母校順大に戻り、水泳部監督。日本水泳連盟会長、日本オリンピアンズ協会会長などを経て、15年10月に初代スポーツ庁長官に就任した。

(2019年6月26日、ニッカンスポーツ・コム掲載)