提言(3)センバツ甲子園は都市対抗方式で

センバツ大会で始球式を行う鈴木大地スポーツ庁長官(2018年3月23日撮影)
センバツ大会で始球式を行う鈴木大地スポーツ庁長官(2018年3月23日撮影)

社会人野球の都市対抗は、同地区の他チームから補強選手を呼ぶことができる。同様の方法は、甲子園大会でも可能ではないか。

 春と夏、同じような大会をつくらなくてもいいのでは。今でも違うやり方にはなっているが、たとえば、春のセンバツは1つの高校だけでチームとするのではなく、都道府県代表のようなチームをつくる。他の高校の投手も助っ人として4、5人、呼べることにする。都市対抗のイメージ。投手が増え、連戦も可能になる。過密日程でやるなら、いかにチームの投手を増やすか考えないと。

秋季大会の結果から出場校を決めつつ、「都道府県選抜対抗戦」の色を打ち出す。「体の負担をなくすため、もっと柔軟に日程やチーム編成を考えていい」と付け加えた。

プロ野球ユース構想や、センバツ甲子園都市対抗方式は、高校野球の勝利至上主義を是正する一手となるだろうか。少なくとも、既存の価値観が揺さぶられるのは間違いない。だが、どんなアイデアを打ち出したところで、こういう反論は根強いのではないか。「成長期に試練を与えなければ、逸材は育たない」と。

 考えは分かる。今の高校野球のやり方の中で、これだけ名選手が育っているのは、すごいこと。ならば、もっと負担がない形、緩やかに体をつぶさない形でやったなら、もっと名選手が生まれてくると思う。やってないから、比べられないだけではないか。 先入観を排すよう訴えた。当たり前と思われてきたものが、実は絶対ではないというケースは、他にもある。(つづく)

◆鈴木大地(すずき・だいち) 1967年(昭42)3月10日、千葉県習志野市生まれ。7歳で水泳を始め、千葉・市船橋高3年のロス五輪に出場。順大4年時のソウル五輪100メートル背泳ぎは、予選3位から決勝で潜水スタートのバサロを伸ばす秘策で逆転、日本水泳界に16年ぶりの金メダルをもたらした。92年の引退後は米国でコーチなどを経験し、00年から母校順大に戻り、水泳部監督。日本水泳連盟会長、日本オリンピアンズ協会会長などを経て、15年10月に初代スポーツ庁長官に就任した。

(2019年6月25日、ニッカンスポーツ・コム掲載)