窃盗症と摂食障害との関係

長年、摂食障害の患者の治療に取り組んでいる内科医の鈴木眞理氏(政策研究大学院大教授)によると、「摂食障害の方は飢えているので、思わず食べ物に手が出ることがある。背景には複合要因があるが、些細な食べ物の窃盗は8割方、摂食障害の症状だと思っていい」と話す。ただし、専門家によっても見解に差があるという。

15年以上も摂食障害に苦しんできた原さんが、回復の過程に入ることができたのはなぜか。

 昨年の2月、3月は自分で自分の首を絞めたこともありましたが、死にたくても死ねなかった。でも、自分のことを打ち明けたことで、たくさんの方が私を応援してくれた。平日は会社、休日は陸上という2つの私が輝ける居場所ができたから。

欲しかった居場所ができたことが大きいと、原さんは笑みを見せた。

 会社は、自分の事情をすべて知った上で雇ってくれています。外ではたくさんのランナーさんと接する機会を与えてくれた陸上関係者との出会いがきっかけで、また元気になれました。最近は、マラソン大会でスタッフやゲストランナーとして外に出る機会も多くなり、たくさんの人と出会っています。過去の自分ではなく、今の自分を見て接して下さるのがうれしくて、「よし、頑張ろう」と毎回毎回、勇気をいただいています。

「今ではこんなに笑えるようになった」と笑顔を見せる原さん
「今ではこんなに笑えるようになった」と笑顔を見せる原さん

カミングアウトで楽になった

摂食障害という病気を明かすことは、非常に勇気のいることだ。原さんがカミングアウトを決めた大きな理由の1つは、執行猶予中の再犯で逮捕された勾留期間中にあるという。

 弁護士さんに「死にたくても死ねなかった」と伝えたら、「病気を克服することで、たくさんの人が元気になるんだよ」と言われて、それがすごくうれしかった。「こんな自分でも、人の役に立てるんだ」と思ったら、まずは自分のダメなところを隠さないで、すべてを打ち明けようと。「みんな私のことは知っている。もう隠さなくていい」と思った時、すごく気持ちが楽になった。今まで誰にも相談できなかったけど、ちょっと辛いことがあれば言えるようになったし、何かあれば相談に乗ってくれる人がいると思うだけで、すごく楽になった。

ただ、摂食障害、窃盗症とはまだ闘っている。

 いつまた、症状が現れるか分からない。ずっと病気との闘いだと思っています。

厚生労働省によると、摂食障害の患者推定数は約23万人(1998年時点)で9割以上が女性。20年間で約10倍増えているが、医療機関を受診していない潜在層を含めるともっと多いとされる。

 まずは1人で悩まないで欲しい。勇気を持って信頼できる誰かに相談して欲しい。早期相談をして、早期治療に移って欲しい。相談された方は、勇気を出して打ち明けてくれたその人と真剣に向き合って、どうすればいいかということを一緒になって考えて、対処して欲しい。

1人の人間としての扱いを

さらに、アスリートの家族や指導者に対しても、要望を出した。

 指導者は、選手としてではなく、1人の人として大切に接して欲しい。私は段々、競技が嫌になっていきました。でも、「仕事だから仕方がない」「体重管理も仕事だから仕方がない」と。そうではなく、指導者には、アスリートが競技が好きだと思える指導をして欲しい。あまりにきつい制限、指導ではなく、その先を見た指導をして欲しいと思います。

引退してからの方が、人生は長い。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】