お母さんがつらいなら僕が野球をやめる

澤中監督 お茶当番で嫌な思いをした母親が、家でシクシク泣いていた姿をみて、その子は「お母さんがつらいなら僕が野球をやめる」って言ったそうです。本末転倒ですよね。

だから、チーム立ち上げから、いかに親たちの負担を減らすかを考えてきた。「お茶当番」をはじめ、強制的な当番制は敷かず、飲み物や弁当などは大人も含めて各自で用意する。練習場所や試合会場までは基本的に公共交通機関を使い、遠征からの帰りは「チーム最寄り駅」までみんなで一緒に行動する。

6年生の送別記念試合では親子対決が実現。保護者が打席に立つ場面も
6年生の送別記念試合では親子対決が実現。保護者が打席に立つ場面も

横浜金沢V・ルークスでは「少年野球は親子の物語」とし、次の基本精神を掲げている。

主役は子であり親である。子供の頑張る姿を見ることによって親は生活に張りを持ち、子供はそんな親をみてさらに向上心を持つ。

理想は高く。ただ、現実はそう簡単なものでもない。横浜金沢V・ルークスも他の少年野球チームと同じ悩みを抱えている。それは子供の内面の問題だ。(つづく)【沢田啓太郎】

3月末に行われた6年生の送別記念試合の後、選手とともに円陣を組む保護者
3月末に行われた6年生の送別記念試合の後、選手とともに円陣を組む保護者

◆少年、学童野球のお茶当番
スポーツ全般でかつては練習中に水を飲むことを禁じた時代もあったが、今は小まめな給水が常識になっている。特に真夏の炎天下では、選手が持参する水筒だけでは足りず、追加補給する場合も多くなっている。そのために、多くのチームが主に母親によるお茶当番を置き、水分補給だけでなく、体調不良やケガの応急手当てなどを請け負っている。

それが、負担だとして問題視されたり、逆に入部案内に「お茶当番はありません」と呼びかけるチームもある。一方で輪番制にして、保護者が交代で当番を運営するチームも多い。お茶だけでなく、遠征の配車や会計管理、納会や送別会の運営などを分担して、子どもたちの野球チームを、保護者のコミュニケーションの場所として充実させている。

◆横浜金沢V・ルークス
2017年3月、選手5人でスタート。横浜市金沢区を拠点に活動。月謝は3000円。VはVoyage(大航海)、ルークスはきらめき。子供たちの人生にひと筋の光を射すことができたら、との思いを込めて命名。