離れて分かる親のありがたみ/取材後記

春に親元を離れ、自炊や寮生活をスタートさせたアスリートの中には、家庭料理が恋しくなり、親のありがたみに初めて気づいているかもしれない。佐藤康太郎もその1人だ。

「好きだった料理が寮ではできないので、懐かしく思うことがあります。1人だと生活費もたくさんかかるので、きょうだい3人を育ててくれた両親はすごいと思いました」。

高校新記録を樹立した強い体は、野菜中心の家庭料理がルーツになっている。白菜のミルフィーユ鍋、自作のキャベツサラダ、豆もやしのナムル、大根の煮物、ウリの寄せ炊き…。取材日の夕食は「野菜づくし」なメニューだった。

大根の煮物など、油を使わない和食も佐藤家の定番メニュー
大根の煮物など、油を使わない和食も佐藤家の定番メニュー

母明代さんは「大会前は減量もあるので、ウチはご飯ばかり食べているというわけではありません」と、康太郎選手のコンディショニング術を語る。家庭菜園で育てた、無農薬のキャベツ、ブロッコリー、トマト、ナス、ジャガイモ、ピーマンなどは、採れたての状態で調理される。明代さんが祖母節子さんと協力して「体重を増やさず、力を出すメニュー」を日々研究。父和夫さんも、毎日子ども3人の弁当を作り続けた。仙台で有名な「定義とうふ店の三角あぶら揚げ」は定番メニューであり、康太郎選手の大好物。タンパク質を大豆から多く取り、プロテインに頼らない体づくりを行ってきた。

2024年パリ五輪出場が目標

大学生活は初めてのことばかりで、埼玉・所沢市にあるキャンパスと西東京市にある合宿所までの電車通学もその1つ。「高校までは自転車通学。今は夜ご飯が遅くなってしまうので、補食をして空腹を作らないようにしています」。慣れない生活の中で、1つ1つ工夫を増やしている。

隆々の筋肉を披露する佐藤康太郎(左)と弟の駿太郎
隆々の筋肉を披露する佐藤康太郎(左)と弟の駿太郎
背中もすごい筋肉だ
背中もすごい筋肉だ

当面の目標は6月の世界ジュニア選手権大会。2024年パリ五輪出場を目標としているだけに、今の世界レベルを知るチャンスとなる。これまで、大きな大会であればあるほど結果を出してきた康太郎選手。それだけに周囲の期待も大きい。「誰かに勝ちたいとかではなく、目標はいつも自分自身。これからも自分の記録を伸ばすことに集中して、努力していきます」。家族が支えてくれた強い体、そして世界を目指す心を武器に、進化を続けていく。【樫本ゆき】

「父を超えたい」強い思い感じた/中学時代の恩師語る

康太郎選手にとっての「恩人」八木山中時代の担任、河崎和恵教諭は、佐藤家の絆をこう語る。「康太郎君は野球部の主将も務め、成績も優秀な文武両道の模範生でした。両親から帝王学を学び、そんな両親を誇りとしていましたね。競技に関して純粋に、ひたむきに努力する姿に、父を越えたいという強い思いを感じました」。そして「『心』は大丈夫。心配していません。とにかくケガだけには気を付けて夢を追い続けて欲しい」と世界を目指す教え子にエールを贈っていた。

宮城農から早大に進学

佐藤康太郎(さとう・こうたろう) 2000年5月7日生まれ。宮城県仙台市出身。八木山中2年から重量挙げを始め、中3で全国大会優勝。父が監督を務める宮城農に入学し、高2で3冠達成。高3の福井国体少年男子69キロ級にて高校新記録(トータル296キロ)を樹立。卒業後は早稲田大学スポーツ科学部入学。好きなお弁当のおかずは、唐揚げ、砂肝、鶏なんこつ揚げ。163センチ、72キロ。