昨年、高校生ながらハンドボール男子日本代表に選出された部井久アダム勇樹(中大1年、セッソン・レンヌ)を輩出した福岡・博多高男子ハンドボール部は、2017年10月からアプリを使った食事管理を行い、チーム強化を図っている。名付けて「食事の見える化」。食育ミーティングをメインとしたある日の練習を訪ねた。

ミーティングでアプリ入力での成果を報告し合う選手たち

中学でハンドボールを始め、久留米工大付(現・祐誠)、大体大で全国優勝の経験を持つ林圭介監督(38)が、この取り組みの意図を説明した。

「自分が中学生のとき、毎日日誌をつけてセルフチェックをしていたんですが、『ふり返って見返す』ことは、とても大切なことなんですよね。今は便利なツールがたくさん出ているので、食べた物を記録していきながら、体づくりへの興味関心を高めて欲しいなと思ったのです」。

何を、いつ、どのくらい

チームは1、2年生計13人の部員全員が県内出身の自宅生で、寮生活のように食事管理を徹底することができない。その中で選手たちが「何を」「いつ」「どのくらいの量」を選んで食べているか、林監督が把握できるツールとなっている。

このアプリは今年、インターハイをはじめ高校3冠を達成した氷見(富山)も導入しているもので、月に1度担当者が来校してアドバイスしてくれる。部費から予算を捻出して利用しているだけに、林監督の本気度は並々ならぬものがある。

「ハンドボールは瞬発力を要するスポーツですが、体と体がぶつかり合うコンタクトスポーツでもあります。接触による体力の消耗は大きく、運動量はバスケットと同じか、7人制ラグビーくらいあるとも言われています。強い身体を作ることは、チーム作りの中で最も大切なこと。自分自身が大学時代にケガに泣かされた経験があり、ケガ予防のためにも食事とトレーニングは基本であると考えています」と力説する。

平日は、屋外の自校グラウンドで午後5時~8時まで練習

選手たちの“アプリライフ”を聞くと、まず朝8時に学校に集合し、朝食データを入力。ここで一旦、林監督にタブレット端末を預け、放課後に昼食データを入力。帰宅後、夕食データを入力し、1日に食べた栄養素とカロリーを集計する。

選手の中には、補食のおにぎりを持参する者も多く、トータルで1日3500~4000kcalを目標にしている。ポジションにもよるが、「身長-100」を基準とし、ピボット(攻撃時にディフェンスをブロックするポジション)の選手には「身長-90」と、プラス10キロを目標に置いている。

キャプテンで昨年のインターハイ8強メンバーの濱田聖選手(2年)は「野菜が不足しがちなので、家の食事は鍋が多いです。中でも、もつ鍋が1番好きですね。アプリで入力してみたら、朝食が200kcalしかとれていなかったことに気付きました。朝は時間がなくてもなるべく食べるようにしたい」と話した。入学時から7kgの増量を果たし、結果は上々だ。

食事メニューを入力するだけで、栄養素やエネルギーの概算が出るアプリを利用している

福永偉央選手(2年)は「昼2合、夜も2、3合食べて1日4500kcalを目指しています。母が作る昼の弁当が、月曜オムライス、火曜チキンカツ、水曜焼き肉、木曜野菜、金曜チキン南蛮と、曜日ごとに決まっていて毎日楽しみです」とニッコリ。「ジャンプ力とパワーをつけたい」と目標を語った。

チームメートから「筋肉NO・1」と評される高田海人選手(2年)は体脂肪率9%の体で当たり負けないパワーを持つ。「1試合で1、2キロ体重が落ちてしまうので、維持する努力をしています」。貴重な両利きプレーヤーとして、自己管理の意識も高い。

春の選抜につながる県の大会、FHBAカップで準優勝し、現在チームは新人戦県大会に向けて練習を行っている。「昨年のアダムのようなスター選手はいませんが、総合力では力のあるチーム。九州大会で上位に入り、全国16強を狙える力はあると思います」と林監督は自信をのぞかせる。

博多高ハンドボール部を率いる(左から)河相卓視部長、林圭介監督、山田裕貴顧問

2020年東京五輪の開催国として、ハンドボール男子は88年ソウル大会以来32年ぶりに出場する。ハンドボール熱が高まる中、かつて全国の上位に常に名を残し「ハンドボール王国」と呼ばれた福岡県の高校チームも競技力底上げに力を入れている。博多高は、先輩アダムの活躍を刺激に、体作りから強化する。【樫本ゆき】

◆博多高ハンドボール部 1941年(昭16)和洋文化女学校として開校。1993年(平5)に現在の学校法人博多学園博多高等学校に改称。ハンドボール部は2014年(平26)に創部。選抜2回、インターハイ3回出場(17年は8強)。部員数13人、女子マネジャー3人。河相卓視部長、林圭介監督、山田裕貴顧問。福岡市東区水谷1-21-1。