3度の全国制覇を果たし、潮田玲子や栗原文音(日本ユニシス)などの五輪選手を輩出している九州国際大付・女子バドミントン部。U―19監督もつとめる明神憲一監督(47)が日曜日の食事を担当しています。アットホームな「寮めし」が一体感を生み出し、強さの源になっています。

料理で一体感ばっちりな九州国際大付女子バトミントン部

ペッタン、ペッタン~♪ 九州国際大付・女子バドミントン部の選手が生活する「華橘寮」(はなたちばなりょう)の食堂に、軽快なリズム音が響いた。

「今日の夕飯メニューは、きのこソースの煮込みハンバーグです」。大きな手のひらでひき肉をたたき、ソフトボール大の特大ハンバーグを作るのは、明神監督だ。

「ワッ、おいしそう~!」。日曜日の練習を終えた選手たちが食堂をのぞき込んで歓声をあげた。コンソメスープ、ポテトサラダ、ニンジンのグラッセ、ブロッコリーのベーコン炒めも添えて、この日の夕飯が完成。デミグラスソースがたっぷりかかったアツアツのハンバーグとご飯を口いっぱいにほお張りながら、選手たちはとびきりの笑顔だ。

明神監督自らこねこね特大ハンバーグ作り

五輪選手を多数輩出

98、99年の2連覇を含む、21年連続34回のインターハイ出場。12年選抜大会優勝と、輝かしい実績を持つ九州国際大付。卒業生には、森かおり、池田信太郎、潮田玲子、栗原文音と4人のオリンピック選手がおり、全国屈指の名門だ。8年前に完成した女子寮で全選手が生活し、U―19女子日本代表の監督も務める明神監督が寮生活を含めたチーム強化で、近年安定した戦績を残している。

「ウチの強さの秘密は、寮生活から生まれた一体感です」と言い切る。校内に併設している「華橘寮」には現在、高校生選手17人と、付属中学選手1人が生活している。朝6時半起床、午後11時消灯。朝の食事、風呂、掃除当番などが割り当てられ、規則正しい生活の中で協調性や、コミュニケーション力を育んでいる。アスリートとしての心と身体が鍛えられる学びやだ。

「バドミントンは瞬発力の競技ですが、ラリーがつながると試合が2時間にも及びます。大会中は多い時で1日5試合する日もある。練習時間が長く、試合も長い。心と体のスタミナが必要なスポーツなんですよ」と明神監督は話す。「だからこそ、寮にいる時間は、選手たちに楽しい雰囲気でリラックスしてほしいんです」と続けた。

監督と選手の会話弾む

そこで始めたのが、8年前からの夕食当番だ。夕食の出ない日曜日の夜、明神監督が自ら調理場に立ち、一食350円の予算で18人分のおかずを作っている。海外遠征などで不在が多いため「不定期ですが…」と前置きするが、料理好きと根っからのサービス精神を発揮。食文化が不安な海外遠征では、鍋と炊飯器を持参して代表選手に日本食をふるまうそうだ。「折尾(北九州)のかしわ飯を作ったら喜ばれました。おでん、マーボー豆腐、アヒージョ何でも作りますよ」。「男の料理」のレパートリーは数十種類。先日は寮で握りずしを400貫作ったそうだ。「食事当番の選手と一緒に作るので会話も弾むし、練習では出せない、和気あいあいとした雰囲気が生まれます」と、日曜日の“スペシャルディナー”の効果を語った。

寮の食堂で和気あいあいの選手たち

主将の田島珠姫さん(2年)は「明神先生の手料理は毎回めちゃめちゃ楽しみなんです。普段はご飯1杯だけど、こういう時は2杯食べちゃいますね」とニッコリ。バドミントンの運動量はバレーボール1試合分とも言われ、ある選手は「1試合で1~2キロも体重が減ってしまう」と話す。その中で選手たちは「身長―110」の体重キープを目指しコンディショニングを行っている。年頃の高校生だが、寮内では基本的にスイーツ禁止。田島主将は「体脂肪を増やさない工夫をしています。バランスよく食べて『太らず、減らさず!』です」と意識の高さをのぞかせた。

選手も料理上手に

選手たちは「寮に入って料理の腕が上がりました!」と声をそろえる。というのも、寮の朝食だけは食事当番の3人が作ることになっており、買い出しから調理までを担当するからだ。水上莉奈さん(2年)は「豚バラと白菜のミルフィーユが好評でした。先輩に教わったり、本を参考にしてみんなで悪戦苦闘しています」と笑う。選手たちに聞くと「でも失敗だらけだよね!」。親に任せっきりだった料理を自分ですることで食への意識も高まる。未来のオリンピアンは、明るく頼もしい"主婦予備軍”でもある。

九州国際大付の強さの秘密は手料理を通じたコミュニケーション。素材を生かした明神監督の手腕が、料理も、チームも、深みある味を出していく。【樫本ゆき】

◆九州国際大学付属高校 八幡大付属高等学校(男子校)として開校。63年(昭38)に女子部を設置。89年(平元)に現在の校名に改称。00年(平12)に付属中学が併設される。女子バドミントン部は75年(昭50)創部。インターハイ(2)、選抜大会(1)で3度の全国制覇。野球部は9回(春2、夏7)の甲子園出場を誇る強豪校。北九州市八幡東区枝光5の9の1。藤本孝治部長。西元孝幸校長。

◆明神憲一(みょうじん・けんいち) 1970年(昭45)、福岡県遠賀郡芦屋町生まれ。八幡大付(現九州国際大付)で国体出場(団体)。大東文化大でインカレ出場し、卒業後、母校監督に就任。1年目に女子シングルで全国3位。インターハイ23回(個人)、26回(団体)出場。U-19女子監督を兼任。社会科教諭。

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(2018年11月8日付日刊スポーツ紙面掲載)

バドミントン選手のためのレシピ