<アスリートの摂食障害(5)>

 女性アスリートの健康上における問題をご存知だろうか。「無月経」「骨粗しょう症」、そして摂食障害予備軍の「Low energy availability(利用可能エネルギー不足=以下LEA)」の「女性アスリートの三主徴」。アメリカスポーツ医学会が発表したこれらの問題は、継続的な激しい運動トレーニングが誘因となり、それぞれの発症が相互に関連している。

 聖路加国際病院の産婦人科医で、女性総合診療部部長でもある百枝幹雄副院長は、6月に開催された「世界摂食障害アクションデイ2018」(日本摂食障害協会主催)で登壇し、「10代の時期にいかにエネルギー不足を防ぐかが、一生を考えて非常に重要なこと」と力を込めた。

女性アスリートの三主徴

 まず女性アスリートの三主徴について、それぞれ簡単に説明しよう。

LEA(利用可能エネルギー不足)

 使っているエネルギーを食事で十分に補えていない状態のこと。2007年までは摂食障害としていたが、予備軍の存在も無視できないということが分かりはじめ、このような分類となった。成人の場合はBMI17.5以下、思春期の場合は標準体重の85%以下が目安となる。

無月経

 月経(生理)がないこと。食事制限、体重管理や激しいトレーニングなどで心身に大きな負荷がかかるアスリートは、運動を原因とした「運動性無月経」になりやすい。無月経の割合をBMI(肥満度を表す指数)を通して見ると、18.5~17.5では20.3%が、17.5未満になると26.5%が無月経になったという報告がある。アスリートのBMIと無月経の相関性はデータ上でも明らかになっている。

日本医療研究開発機構「若年女性のスポーツ障害の解析とその予防と治療」から

 競技別に見ると、体操や新体操、フィギュアスケートなどの審美系競技が多く、陸上・長距離、トライアスロンが続いている。

JISS「女性アスリートの三主徴」より

骨粗しょう症

 骨密度(骨の強度)が低下し、骨折しやすくなる病気。古い骨を溶かし、新しい骨を作るバランスのとれた骨代謝にはエストロゲンという女性ホルモンが深く関係しているため、エストロゲンが低下する閉経後には骨量も急激に低下し、骨粗しょう症のリスクが高くなる。強い骨を作らなければならない10代に無月経になってしまうと、エストロゲンが十分に分泌されず、骨がスカスカになり、疲労骨折の引き金になる。最大骨量獲得時期に、そのピークを十分に上げることができず、女性として必要な骨密度が得られなくなる。

 競技別に見ると、陸上・長距離は約74%が疲労骨折になっていた。もちろん、そのすべてが無月経を原因とするものではないが、以前紹介したコラムにもあるように、軽量化戦略による低体重と無月経が関連している可能性が高い。

次のページ無月経になった10代選手の治療法は?