33人で計120合のご飯完食

夕食で1人平均3~4合のご飯をたいらげた選手たち。1日約6~7合のご飯を食べ、夏を勝ち切るスタミナをつける
夕食で1人平均3~4合のご飯をたいらげた選手たち。1日約6~7合のご飯を食べ、夏を勝ち切るスタミナをつける

 関東大会前の3月、九州合宿(佐賀)での夕食では、部員33人で合計120合ものご飯を豪快にたいらげていた。1人平均3・6合。おかずもしっかり食べ、みそ汁は2~3杯飲み、ここで水分と塩分を補給していた。ただし、水はコップ1杯程度。水で腹を膨らますことも、流し込むこともせず、選手たちはしっかり噛んで食べていた。

圧巻の食欲で、120合用意されたご飯はあっと言う間に空っぽに(写真は3年の松元孝平選手)
圧巻の食欲で、120合用意されたご飯はあっと言う間に空っぽに(写真は3年の松元孝平選手)

 甲子園に出場経験があり、高校時代から食トレを実践していた選手もいるが、大学でさらに体重増加に成功した者も多い。「最初は苦労しましたが、今では普通にご飯4~5杯は食べられるようになりました。合宿中は1日中ハードな練習をするのですが、しっかり量を食べているから、体重が減りにくくなりました」(小谷魁星内野手=3年、高崎健康福祉大出)。「大学入学時から2年間で8キロも体重が増えました。夏場の練習で足がつることがなくなって、体もバテにくくなったと思います」(端岡陸内野手=3年、報徳学園出)。

 このように「夏を乗り切る食トレ」でパフォーマンスも向上し、本番で力を発揮できるようになったという。

八戸学院光星出身の千葉諒主将(4年)は「おいしい食事を食べられることに感謝して、野球で恩返ししたいです」
八戸学院光星出身の千葉諒主将(4年)は「おいしい食事を食べられることに感謝して、野球で恩返ししたいです」

スタミナ切れない体に

 選手たちは全国大会直前に約1週間の秋田合宿を行う。東北地方とはいえ、30度を超える猛暑日もある中、宿舎から球場まで毎日約10キロのランニングで体力をつける。

 池田監督は「この食トレを始めてから、秋田合宿や全国大会で1人も熱中症になっていません。スタミナが切れない体ができているのだと思います」と胸を張る。全国大会は5日間で5連戦という過密日程。ベンチには塩と梅干しなどを常備し、試合に臨む予定だ。

 「練習は嘘をつかない。『原点回帰』で団結して2年ぶりの優勝を目指します」(池田監督)。夏を制する食トレの成果が楽しみだ。【樫本ゆき】

大学は最後の人間教育の場

正しい姿勢、正しい箸の持ち方で食事をする選手たち。社会に出ても恥ずかしくない食事マナーを身に付けている
正しい姿勢、正しい箸の持ち方で食事をする選手たち。社会に出ても恥ずかしくない食事マナーを身に付けている

 池田監督のモットーの1つに「選手と一緒に朝、昼、晩の食事をする」がある。コーチに任せるのではなく、自分の目で選手たちの様子を見守り、食欲や表情をチェックする。特に「食事中の姿勢」についてはうるさく注意。「きちんと正座をさせ、姿勢をキープし、正しく箸を持たせます。彼らに将来、彼女ができて、結婚のお願いをご両親に伺いに行く時、食事の姿勢が美しいほうがいいでしょう?」。

 大学は社会に出る前の、最後の人間教育の場。野球だけでない、あいさつや礼儀、整理整頓など、人としての常識を正しく身に付けることも中大準硬式野球部のテーマになっている。

野球だけでなく、私生活の取り組みも日本一を目指している中大準硬式野球部
野球だけでなく、私生活の取り組みも日本一を目指している中大準硬式野球部

準硬式野球とは

 「中が硬式、外が軟式」といわれる準硬式球を使用する野球競技。ボールはコルクの粉末と樹脂を混ぜ合わせた芯に糸を巻きつけ、表面を天然ゴムで覆ったもの。重さ、大きさは硬式とほぼ同じで軟式H号、トップボールとも呼ばれる。打撃は硬式用の金属バットを使用する。全国の大学284校、1万906選手が加盟。8月19日から静岡・浜松球場ほかで全国選手権大会が開催される。プロ野球選手も輩出しており、2017年入団の楽天鶴田圭祐(元帝京大)、巨人坂本工宜(元関西学院大)が大学準硬式出身。