聴覚に障がいのあるラガーマンたちが、世界に羽ばたく。デフラグビーセブンズ(聴覚障がい者の7人制ラグビー)世界大会が22日~26日、オーストラリア・シドニーで開催。実に16年ぶり2度目の開催となるビッグイベントに向けて20日、日本代表が出発する。

世界大会に臨むデフラグビー日本代表

 ラグビー日本代表といっても「ジョセフ・ジャパン」と比べると、体格的にはかなり小粒だ。しかし、昨年5月に行われた管理栄養士・金子香織さんの手話による栄養セミナーを受け、各選手とも食事からの体調管理を意識。タンパク質重視の食事をするようになり、体の切れ、スピードが増した。

 大会には、米やみそなど日本の食材を持ち込む。チームからのリクエストは試合当日の朝ご飯、昼ご飯は食べ慣れているおにぎり、みそ汁を中心とした食事。金子さんはそれを受けて、現地で炊飯器を購入し、選手、スタッフ合わせて12人分の食事を作る準備をサポートしている。7人制ラグビーは1日に何試合も行われるため、栄養補給がカギとなる。

 全国から集められた代表選手は2カ月に1度、合宿をこなしながら、アタック、ディフェンスともにシステム作りをしてきた。健常者との練習試合でも、昨年までは負けが続いていたが、今年に入って連係プレーの精度が高まり、勝つ試合が増えている。「このままいい状態でオーストラリアに臨めそうです」と落合孝幸監督も手応えをつかんでいる。

練習中、手話を使ってコミュニケーションをとる大塚キャプテン(左)と落合監督

 4カ国で争われた2002年の前回大会は準優勝。ニュージーランドやオーストラリアを破っての快挙だった。今大会は11チームが出場するが、落合監督は「もちろん、前回以上の成績を目指しています」ときっぱり。大塚貴之キャプテン(25)も「自信はある」と力を込めた。

元帝京ラグビー部大塚貴之が引っ張る

 チームを引っ張る大塚キャプテンは、昨年度まで大学選手権9連覇の帝京大ラグビー部に所属し、公式戦でトライを決めたこともあるトップアスリートだ。

 コンディション作りにおいても、帝京大時代に身に付けた食事のとり方、質の良い睡眠を意識し、チームに還元している。「脂っこいものやお菓子は食べない。もう体が受け付けないんです」と167センチ、72キロの体形をキープする。

練習で、タックルをかわしてトライする大塚キャプテン(左)

 障がい者スポーツといえば、パラスポーツが思い浮かぶが、聴覚障がいはその中にはない。耳が聞こえないハンディはあるものの、健常者の中で戦えるというスタンスからだ。大塚以外でも、岸野楓は早大ラグビー部に所属。倉津圭太は高校時代、東海大翔洋(静岡)の一員として花園に出場した。普段、一般のクラブチームで練習している選手もいる。

 ただ、個人競技ならまだしも、ラグビーは接触プレーの多いチームスポーツ。しかも、ボールを後ろに投げながら前に陣地を進めるという特殊性で、コミュニケーションが肝になる。

 デフの選手はフィールド内では補聴器を外すため、わずかに聞こえていた音も完全に消える。そのため緻密な戦略を準備し、プレー中は耳の代わりに目で、大きなジェスチャーや口の動きで仲間に伝え、応える。

手話と大きなジェスチャーで話を伝える大塚キャプテン(中央)を囲む代表メンバー

 大塚は、フィールド外でも積極的に仲間に話しかけ、メンバーの性格やクセを把握した上でプレーに生かしている。一時期、大学時代に追い求めた高いレベルのラグビーと日本デフラグビーとのレベル差に悩んだこともあったが、今は「チームとしてコミュニケーションがとれるようになってきて、心の底から楽しくなってきた」と笑顔を見せた。

 「今大会で勝って、デフラグビーの認知度を高めたい。もっとみんなに、知って欲しい」。デフラグビーの未来を背負った大塚は、大きな舞台を心待ちにしている。

【アスレシピ編集部・飯田みさ代】

◆デフラグビー世界大会 4月22日~28日、オーストラリア・シドニーでのニューサウスウェールズ大で開催。23、24日で予選リーグ。26日で決勝トーナメント。参加はオーストラリア、イングランド、ウェールズ、フィジー、ガーナなど11チーム。女子セブンズも同時開催。

※今回のデフラグビー日本代表の遠征には、東北食糧の胚芽精米(無洗米)とマルサンアイのみそボトル「香りつづくとろける味噌」が提供されます。