<川内優輝の母美加さんに聞く(中)>

 世界陸上男子マラソン代表、川内優輝(30=埼玉県庁)は母美加さん(53)、弟鮮輝(よしき)さん(26)、鴻輝(こうき)さん(24)と埼玉・久喜市の自宅で暮らしている。県立久喜高の定時制事務職員として午後から勤務。通常は朝食、昼食は自宅で、夜は学校で給食を食べる生活だ。

久喜市の駅前歩道橋には、川内の世界陸上出場を応援する横断幕

 「夕食が給食なのはありがたい。そこで少しはバランスが取れているはずですから」。美加さんは日中、仕事があるため、昼食は「簡単に用意できるもの」になるというが、朝ご飯は意識して作っている。

 「ご飯、みそ汁、焼き魚が定番。あとは納豆、豆腐、お新香などでしょうか」。魚は旬のものをメインに毎日、種類は変わるが、基本的な献立は同じ。ご飯は茶碗1杯。レース前後のドカ食いとは違い、ごく一般の成人男子の食事量だ。

川内家の朝食再現。ご飯、みそ汁、焼き魚が定番

 美加さんの手料理を、川内は特に何も言わずに食べる。「何か言うなら、自分で作りなさいって言われるのを分かっていますからね」と美加さんは屈託なく笑うが、レースを転戦する息子の体を考え、あえて和食、魚を出すようにしている。

自宅ではあえて和食

 かつての朝食メニューは「その方が簡単だから」とパン食で、サラダ、卵焼きといった組み合わせだった。本来、川内は肉が好きでこってりしたものを好む。しかも、すぐに太るタイプで一時期、ベスト体重より約10キロ重い70キロになったこともある。海外では食生活が洋食中心になるため、「せめて、自宅にいる時は和食、魚を食べさせたい」と健康管理に努めているのだ。

 川内も年齢を重ねるとともに、以前は食べなかった魚介類、海草類を食べるようになってきた。高3の時に亡くなった父葦生(あしお)さん(享年59)は島根・隠岐の島出身で魚介類を好んで食べており、「好みも似てきたかもしれませんね」と美加さんは目を細める。

変わらないスタイル、味で後押し

 そう言う傍ら、美加さんは、川内がある意図をもち、戦略の1つとして洋食を選んでいるのかもしれないとも感じている。

98年、小学3年の頃、父葦生さんに肩を抱かれる川内。手前は三男鴻輝、右は次男鮮輝

 3年前のあるレースの朝、ホテルのバイキングで一緒に食事をとったとき、川内の皿にはクロワッサン、ソーセージ、ベーコン、オレンジ、バナナなどが並んでいた。「もしかすると、海外で戦えるように、あえて食事内容を変えているんじゃないか」と独自スタイルを貫き、1人で戦う息子をおもんぱかった。それから尚更「自宅では和食」のこだわりが強くなった。

2014年仁川アジア大会男子マラソンで3位に入った川内優輝

 「公務員ランナー」川内が日の丸をつけて走るのは、これが最後になるかもしれない。過去2度の世界陸上はともに18位と惨敗。国際大会は14年アジア大会で銅メダルを獲得した以外、結果を残せていないだけに、今大会に懸ける思いは強い。年末年始に本番コースの試走も終え、5月から3カ月連続で海外フルマラソンを走り、準備をしてきた。

 川内が渡英するまで、美加さんはいつもと変わらない朝食を作り続けた。変わらない味、変わらない支えが、川内のエネルギーになっている。

苦手は柿、あんこ

 以前、川内はカキなど魚介類を好まなかったが、最近は食べるようになってきた。いまだ苦手とするのは柿で、昔から食べないという。甘いものはケーキなど洋菓子が好きで、あんこの入った和菓子は好きでないようだ。

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