東京都内にある各県のアンテナショップが、さまざまな情報発信をしている。
銀座に先月グランドオープンした群馬県のアンテナショップ「ぐんま総合情報センター(ぐんまちゃん家)」は、2階部分にレストラン「銀座つる」を開業させた。大沢正明知事(72)の提案で、地元食材を使った食文化のPRを新たな柱に加えた。また、福井、鹿児島、高知、愛媛の4県は合同で、明治維新150年に絡めたスタンプラリーを実施中。広島など豪雨による災害に見舞われた県では、募金活動もしている。
レストラン事業を新たなコンテンツに
「銀座つる」は、群馬県民なら誰もが知っている「上毛かるた」の「鶴舞う形の群馬県」から名付けられた。ベンガラ色の木目調で、落ち着いた和モダンな造りになっている。
最大の魅力は、群馬の食材をふんだんに使っていること。内陸県のため、海の幸をメニューに加えず、肉や野菜が存分に味わえる。上州和牛のダシしゃぶしゃぶや、ヒレ肉の昆布締め炭火焼きは、口の中で溶けるようなうま味が魅力だ。刺し身はこんにゃくや湯葉が使われる。経営する「田園プラザ川場」の永井彰一社長(54)は、「地元の食材を使って、銀座にふさわしいメニューを提供したい」と張り切る。
今年6月、約10年間情報を発信していた東銀座から移転するにあたり、「食を通してのPRを」と、大沢知事からトップダウンで指示を受けた。今回のスペースは、東銀座の約1・3倍。広さを生かし、従来の物産販売、観光誘客だけでなく、今までなかったレストラン事業を新たなコンテンツに加えようとした。
魅力度ランキング、上昇なるか
周囲のアンテナショップからの刺激もある。東銀座の岩手県から始まり、有楽町の沖縄県に至るまで、銀座周辺は、こぞって各県が特産品などを販売する激戦区。中でも、山形県はイタリアン、広島県はお好み焼き、高知県は郷土料理と、人気のご当地レストランを抱えている。集客の目玉といってもおかしくない。群馬県は後発ながら、参戦した。「幅広い角度から魅力を感じてもらいたい」と大沢知事は期待する。
いわば、東銀座からのバージョンアップだ。宮崎信雄所長(61)も、「群馬県の情報をさらに大きく発信できる」と話す。物販も合わせ、年間3億円の売り上げを見込んでいる。
ブランド総合研究所が昨年10月に発表した、魅力度47都道府県ランキングで群馬は41位。16年の45位からは上がった。さらに上昇できるのか。「銀座つる」がその一翼を担う。【赤塚辰浩】
◆銀座つる 営業時間は午前11時30分~午後10時(日祝日は午後3時まで)。ランチは2000円~。ディナーのアラカルトは800円~、コースは6000円~。44席、個室は2つ。申し込み・問い合わせ:03・3571・7763。
■「四賢侯」巡るスタンプラリー開催中
明治維新の立役者は「薩長土肥(薩摩・長州・土佐・肥前)」だけではない。幕末、国政に影響を与えた大名が4人いた。それが福井藩主(福井県)の松平春嶽(しゅんがく)、薩摩藩主(鹿児島県)島津斉彬(なりあきら)、土佐藩(高知県)山内容堂(ようどう)、宇和島藩主(愛媛県)伊達宗城(だて・むねなり)だ。「四賢侯(しけんこう)」とも呼ばれた。彼らゆかりのアンテナショップを巡るスタンプラリーが、9月8日まで行われている。
今年は明治維新150年。NHK大河ドラマ「西郷どん」をはじめ、討幕の立役者が取り上げられている。今回の旗振り役となった福井県観光営業部ブランド営業課では、「4人の藩主は力を合わせて幕府、朝廷、薩長の間に立って、争わずに近代国家への基礎を築いていった。維新150年の中で、それにも注目してほしい」と説明する。
2年前のスタンプラリーでは熊本、山口、高知、長崎、鹿児島の各県の協力を得て、1000件の応募を集めた。「いろんなことに興味を持った人が集まるアンテナショップは、情報の発信地として活用できる。合同で行うことにも意義がある」(福井県)。少なくとも前回と同数の応募を期待している。
■災害の募金活動の場にも
アンテナショップは、多くの人に窮状を訴える場にもなる。先月の西日本豪雨被災者への募金を広島、岡山、愛媛の3県では行っている。銀座にある広島県のアンテナショップ「TAU(たう)」では、2階に樽(たる)の募金箱を設置。樽募金といえば、広島カープが創設間もないころ、球場の入り口に四斗樽を置いて資金を募り、市民に支えてもらった。7年前の東日本大震災の時には、カープの選手たちが試合前に樽を持って義援金を呼び掛けた。今度は地元の被災地を救う番だ。
■スイーツでクールダウン
猛暑の今夏、記者の一押しスイーツは岩手県のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」の小岩井ソフト(Mサイズ300円、S200円)だ。濃厚なソフトクリームの甘さは、外回りで動いて汗をかいた後の疲れを取り、食後のデザートに合う。同ショップが「来店される方の多くが食べていく、ウチの主力商品」と評するのも、分かる。
(2018年8月5日付日刊スポーツ紙面掲載)