厚生労働省はこのたび、睡眠による休養を十分とれていない人が増えているなどとして、専門家による検討会で推奨する睡眠時間や生活習慣を世代ごとに示した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を新たにまとめた。同様のガイドは以前にもあったが、日本人の睡眠が年々悪化しているとして、今回10年ぶりに見直した。

成人は6時間以上の睡眠を推奨

その中で、小学生は9~12時間、中高生は8~10時間、成人は6時間以上を目安に睡眠時間を確保するよう推奨している。一方で、高齢者は寝床にいる時間が8時間以上にならないよう注意喚起した。

世界33カ国の平均睡眠時間は8時間28分だが、日本人は7時間22分と短い。健康寿命にも影響するとして、睡眠による休養を十分にとれていない人の割合を、2009年の18.4%から15%に減らそうとしたが、最新のデータだと21.7%とむしろ悪化したという。特に中高年50代において増加の度合いが大きかった。

睡眠時間が短いと死亡リスクが高まる

そのようなことを受けて、今回は睡眠について近年の研究で科学的に明らかになった内容も盛り込まれた。

成人と高齢者は、目覚めた時に体が休まったと感じる「睡眠休養感」が重要とされ、アメリカで行われた調査では、40歳から64歳の働き盛りの世代で睡眠時間が5時間半未満で「睡眠休養感」が低いほど、死亡リスクが高まったという結果も紹介された。近年の国民健康・栄養調査によると、日本人の睡眠で休養がとれている人の割合は8割程度で、特に20歳以上の成人で7割程度と低く、年々減少傾向にあるという。

生活習慣の見直しや寝室の環境改善

「睡眠休養感」を高める対策としては、食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境、嗜好品の摂り方の見直し、就寝直前の夕食や夜食、朝食抜きなどの食習慣の乱れを整えるなどを挙げている。

寝過ぎも良くないということでいえば、正月休みの「寝だめ」もダメだということだ。「寝だめ」をすると、平日の体内時計が狂って、海外旅行と同じ時差ボケのような状態になり、肥満・糖尿病のリスクが生じる恐れもあるとのことなので注意しよう。

良質な睡眠をとるにはどうすればいい?

<環境づくり>

日中にできるだけ日光を浴びると、体内時計が調節されて入眠しやすくなる。
寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる。
寝室は暑すぎず寒すぎない温度で、就寝1~2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなる。
できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠ることが良い睡眠につながる。

<運動、食事等の生活習慣>
適度な運動習慣を身につけることは、良質な睡眠の確保に役⽴つ。
しっかり朝食を摂り、就寝直前の夜食を控えると、体内時計が調整され睡眠・覚醒リズムが整う。
就寝前にリラックスし、無理に寝ようとするのを避け、眠気が訪れてから寝床に入ると入眠しやすくなる。
規則正しい生活習慣で、日中の活動と夜間の睡眠のメリハリをつけることで睡眠の質が高まる。

<嗜好品について>
カフェインの摂取量は1日400mg(コーヒーを700cc程度)を超えると、夜眠りにくくなる可能性がある。
カフェインの夕方以降の摂取は、夜間の睡眠に影響しやすい。
晩酌での深酒や、眠るためにお酒を飲むこと(寝酒)は、睡眠の質を悪化させる可能性がある。
喫煙(紙巻きたばこ、加熱式たばこ、電子たばこ)は、睡眠の質を悪化させる可能性がある。

【アスレシピ編集部】