睡眠時間が短いと、肥満・高血圧・糖尿病・心疾患など生活習慣病や認知症、うつ病などの発症リスクが高まることが近年の研究でわかってきています。しかし、勉強や仕事、家事や子どもの世話などで多忙となり、睡眠時間を削ってしまっている人も少なくありません。

2019年の「国民健康・栄養調査」の結果では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の日本人は男性37.5%、女性は40.6%もいました。2021年の経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、33カ国のうち最も短く、多くの人が「睡眠負債」を抱えているといえます。

睡眠不足は食欲を増進させる

健康な人でも2日間、4時間睡眠の寝不足状態となると、食欲を抑えるホルモンであるレプチン分泌が減少し、食欲を高めるホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大します。起きている時間が長ければ、夜食を食べてしまう。つまり、睡眠不足によって肥満になりやすくなるのです。

さらに、睡眠不足で交感神経が緊張することにより、糖質コルチコイド(血糖を上昇させるホルモン)の分泌量が増加します。不眠症状のある人は糖尿病になるリスクが1.5~2倍にもなるのです。また睡眠時間が短い人は、カフェイン、アルコール、たばこなどの嗜好品やエナジードリンクドリンクの摂取量が多いため、これらも肥満や高血圧などの生活習慣病の要因にもなっています。

大人は1日6時間以上の睡眠時間を確保しよう

2023年10月に、厚生労働省が公表した「睡眠指針2023(仮称)」案は次の通りです。

推奨される睡眠時間

・成人=6時間以上
・1~2歳児=11~14時間
・3~5歳児=10~13時間
・小学生=9~12時間
・中学・高校生=8~10時間

成人は6時間以上の睡眠時間の確保が推奨されています。子どもは年代に応じて時間が設定されていますが、中学・高校生でも8~10時間推奨されているのが特徴です。睡眠不足になる原因に、若い世代ではスマートフォンやインターネット、ゲームが挙げられますが、睡眠時間の確保のためにそれらの利用時間も調整が必要です。

厚生労働省の「令和5年版過労死等防止対策白書」では、睡眠時間が自分の理想とする時間より不足すればするほど、うつ病などになるリスクが高まるという調査結果も示されています。

睡眠の時間だけでなく、質も重要

肥満の人に多い睡眠時無呼吸症候群は、夜間に起こる短い呼吸停止により「低酸素血症と交感神経の緊張」や「酸化ストレスや炎症」、「代謝異常(レプチン抵抗性、インスリン抵抗性)」の状態が続きます。その結果として高血圧・心不全・虚血性心疾患・脳血管障害などにかかりやすくなります。

睡眠不足になると肥満になりやすくなり、その結果、睡眠の質が下がるといった負の連鎖に陥ることになります。ダイエットを目指すなら、食生活とともに睡眠時間も見直す必要があります。まずは1日6時間以上の睡眠時間の確保に努めましょう。

※参照
厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会
厚生労働省 e-健康づくりネット「睡眠」
保健指導リソースガイド

管理栄養士・今井久美