<スポーツする人の栄養・食事学/第2章 スポーツをする人はなにをどう食べたらいいのか(13)>

Q、スポーツをする人が「間食」してもかまわないのですか?

A、間食というと、ただ空腹を満たすためのものというイメージがあります。しかし、足りないエネルギーや栄養素を補う補食という意味で、3食の間に消化にいいものを口にするのでしたら、スポーツする人にとっても間食はご法度ではありません。補食として、栄養補助食品を利用するアスリートも多くいます。

年齢や体重その他の条件によって異なりますが、運動の量によって消費するエネルギーは変わってきます。たとえば、身長170cm、体重62kgの20代の男性が1時間水泳の練習をすると、およそ640kcalのエネルギーを消費します。

もし、空腹の状態で練習をはじめたら、筋肉や肝臓に貯蔵されているグリコーゲンがエネルギー源として使われ、急激にエネルギー不足が生じて血糖値が下がります。すると、集中力が切れ、ケガや体調不良の原因になりとても危険です。

練習前のちょっとした時間に、コンビニで手軽に買えるものでかまいませんから、必ず口に入れましょう。

練習前に「補食」でエネルギー補給

補食として必要なのは、“糖質のグループ”と“ビタミン・ミネラルのグループ“です。そのどちらかに偏ることなく組み合わせれば、より効率よくエネルギーに変えることができます。

糖質は、運動をするときのエネルギー源で、持久力や集中力を高めるのに欠かせません。おにぎり、サンドイッチ、あんぱん、バナナ、ミニうどんなどは、コンビニで簡単に手に入ります。消化のいいものを選びます。

ビタミン・ミネラルを摂取するために、補食として牛乳、ヨーグルト、野菜ジュース、オレンジジュースを飲めば、水分補給も兼ねますから、運動の前後に適しています。

ゼリー状や固形のものを含めて、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン・ミネラルがバランスよくとれる栄養補助食品を補食として利用するアスリートも多くいます。手軽にとれて、消化吸収が速く、即エネルギーになるのでおすすめです。

アスリートが競技中にバナナを食べる理由

テレビ中継で、ジョコビッチやフェデラー、ナダル、錦織圭、シャラポワや大坂なおみなど、世界トップクラスのプロテニス選手が、コートチェンジの時にベンチでバナナを口にしている姿をよく目にします。テニス以外に、プロ野球選手やプロゴルファー、自転車ロード選手にもいるようです。

では、アスリートが競技の途中に、バナナを食べる理由は、どこにあるのでしょうか。

バナナは消化もよく、皮をむくだけで口に入ります。含まれるエネルギーも78kcal(可食部84gあたり。中くらいのバナナは約140g)と、他の果実類と比べて多く含まれています。 さらに、バナナには糖質(炭水化物)、カリウムに加えて、ビタミンB6が0・38mgと豊富です。糖質は筋肉を動かすエネルギー源であり、カリウムは筋肉の機能低下やけいれんを予防します。ビタミンB6は、筋肉をつくるのに欠かせないたんぱく質をアミノ酸から再合成したり、神経伝達物質であるドーパミンなど生理活性アミンの合成にとっても重要な働きを助ける補酵素です。

ですから、数時間という長丁場の競技で激しい動きを続ける選手が、試合中に補食としてバナナを食べるのは意味のあることなのです。

プロのアスリートでなくても、試合の30分~1時間前にバナナを食べるとエネルギー補給につながります。茶色の斑点(シュガースポット)がある熟しきったものはカリウムやビタミンが失われていることがあるので、ほどよく熟して皮がむきやすい黄色いものを選びましょう。試合のある日は常に、1本ずつ会場に持っていくといいでしょう。

バナナ以外にも、一口サイズのカットフルーツ(オレンジ、パイナップル、キウイフルーツ、ブドウなど)も、発汗によって失いやすい水分とビタミンCの補給におすすめです。

(つづく)