力士は1日2食でなぜ太るのか

強くなるためには体重を増やさなくてはいけないといえば、真っ先に思い浮かぶのが相撲の世界です。小兵が巨漢を倒すという観戦の醍醐味もありますが、力士にとってはやはり、体重が重いほうが有利なのは間違いありません。

大相撲では、入門にあたって新弟子検査に合格するには、身長167cm以上、体重67kg以上という基準をクリアしなければなりません。そこから関取になることを目指し、平均体重160kg超、最重量は200kgの逸ノ城、最軽量でも98kgの炎鵬(2021年三月場所時点)が活躍する関取になり、さらに幕内、三役そして大関、横綱にまで上り詰めるために、激しい稽古と食事による体重増という並大抵ではない精進を日々積み重ねていくことになります。ちなみに、横綱・白鵬関の入門時の体重は、70kgに満たなかったそうです。

相撲部屋の1日のスケジュールは、新弟子の場合、午前6時に起床、午前6時半から稽古開始、午前11時に入浴、午後0時昼食、午後2時昼寝・休憩、午後4時掃除・トレーニング、午後6時夕食、午後9時半門限・消灯と、どの部屋もおおむね決まっています(公益財団法人日本相撲協会ウェブサイト)。

これを見ると、食事は1日2回の習慣が定着しているのが分かります。よく耳にする「ちゃんこ」は、部屋で力士がつくって食べる料理の総称で、昼食は「昼ちゃんこ」、夕食は「夜ちゃんこ」と呼ばれ、部屋によって味付けに工夫をこらした「ちゃんこ鍋」はよく知られています。

ちゃんこ鍋は理にかなったアスリート食

トップアスリートにとって基本的な食事内容は、「高たんぱく質・高糖質(高炭水化物)・低脂肪+豊富なビタミン・ミネラル」といわれますが、ちゃんこ鍋は理にかなっています。肉(主に鶏肉)、魚介類、野菜、豆腐、きのこ類をふんだんに使い、高たんぱく質・低脂肪でとてもヘルシーです。しかしながら、カロリーはそれほど高くなく、力士の1日のエネルギー摂取量をまかなうには十分ではありません。

そこで、力士がちゃんこ鍋といっしょに欠かさず食べるのが、高糖質・低脂肪のごはん(白米)です。ごはん茶碗では間に合わず、どんぶりで2杯、3杯とおかわりする力士もざらで、部屋のコメの消費量は半端ではありません。

食べ過ぎても、厳しい稽古で消費され、ちゃんこ鍋もごはんも低脂肪ですから、太るといっても体脂肪が蓄積する肥満ではなく、筋肉の増強がともなった過体重(BMIが25・0以上 30・0未満)であり、体脂肪率が10%台という力士もいます。

ちゃんこ鍋は主に昼に食べるもので、夕食は必ずごはんを主食に、焼き肉、ステーキ、カレー、ハンバーグ、ローストチキン、オムレツ、焼き魚など、量は別として一般の人と変わりません。日中の間食や夜食にラーメンやおにぎり、サンドイッチを食べることもあり、昼食時には水の代わりにビールを飲む力士もいます。ただし、炒め物や揚げ物など油を使って調理されたメニューはできるだけ避けるようにしているようです。

増量に役立つのは、こうした食事の内容だけでありません。朝は原則何も食べずに稽古してエネルギーを消費し、かなり空腹になればそれだけ食欲も増すために、昼食ではドカ食いができます。また、昼食後に必ず昼寝をする(体を横たえる)ことによって、大量に摂取したエネルギーを効率よく蓄えることにもつながります。

一般の人が、このような特殊な食生活習慣を取り入れることはできないにしても、体重を増やすためのヒントにはなります。ちゃんこ鍋にならって、多彩な具材を使ったヘルシー鍋でたんぱく質を、ごはん、餅、うどん、パスタなどで糖質(炭水化物)をしっかりとり、できるだけ脂肪は控える食事を取り入れてみてはいかがでしょう。

(つづく)