おいしいものをおなかいっぱい食べることは、幸福感に満たされますし、楽しみの1つです。しかし、食べ過ぎが続けば体重は増加します。体脂肪、特に内臓脂肪の増加は健康に良くありません。

成人において、摂取エネルギーを制限することで長寿になるという研究は古くから数多くあります。動物実験が中心ですが、人でも長寿地域の食生活研究や期間限定でのカロリー(エネルギー)制限による体への影響などの研究もされています。

どれくらいカロリーを制限すべきか

では、どれくらいカロリーを減らしたら良いのでしょうか。元々の摂取量や年齢にもよりますが、今よりも20~30%、摂取カロリーを減らすことで効果があるという報告が多くあります。

カロリー制限は単に体重を減らすだけでなく、実はたくさんのメリットがあります。大人世代はドカ食い、バカ食いといった過食を避け、腹八分目を心がけることで、病気の予防や老化抑制につながります。

腹八分目カロリー制限のメリット

①老化の遅延
カロリーを制限すると、酸化ストレスを軽減し、体内で生成される活性酸素の量が減少するため、細胞が損傷を受けにくくなり、老化しにくくなります。活性酸素は細胞を傷つけ、老化を促進する要因の1つです。また、ミトコンドリアのストレス応答を改善し、損傷を受けにくくなることでエネルギー産生を促進します。

②代謝改善
カロリー制限はインスリン感受性を向上させ、2型糖尿病や肥満のリスクを低減します。また心血管疾患のリスクも低減します。代謝が良好であることは、長寿につながります。

③炎症の減少
慢性炎症は多くの慢性疾患や老化と関連していますが、カロリー制限は炎症を抑える効果があるとされています。

④遺伝子発現の調節
カロリー制限は、特定の遺伝子の発現を調節し、がん細胞の発現抑制や老化に関連するプロセスを抑制する効果があると考えられています。

また、カロリー制限をすることで、サーチュイン(細胞の修復や遺伝子の安定的な維持に関与するタンパク質)が活性化したり、12時間以上断食するとオートファジー(自食作用、細胞内の不要なタンパク質や損傷した細胞を分解・再利用する)が発現したりするとも言われています。さらに、過食しないことは消化不良や欠食予防になります。規則正しい時間に食事を摂ることにつながり、その結果、自律神経を整えてくれます。

カロリー制限のやり方は様々あり、24時間のうち16時間は何も食べずに残りの8時間で食事をする「16時間ダイエット」も一時、話題になりました。生活スタイルによって可能な範囲でということになりますが、できるだけ早めの夕食にするなど工夫をして、自分に合ったやり方を試してみることをおすすめします。

しかし、低体重の人や高齢者ではエネルギー不足になりやすいため推奨しません。

管理栄養士・今井久美