急に腹痛があり、消化器の病気だと思っていたら尿管(尿路)結石だったということがあります。その痛みは病気の中でもトップ3に入るほどの相当な激痛です。

生涯での罹患率は、男性で7人に1人、女性では14人に1人となっていますが、ここ50年で3倍以上と増加傾向にあり、再発率も約50%。40代以降の男性に多く見られますが、閉経後の女性も発症しやすくなります。肥満している人に多く、生活習慣病との関連が高い病気です。

尿管結石の原因は体質もありますが、生活習慣、特に食生活が関係しています。原因と予防法を見ていきましょう。

尿管結石の原因と予防法

原因1=水分不足

1番重要なのは水分摂取です。特に夏の暑い時期は、尿が濃くならないように水分を十分に摂ることが重要です。

必要な水分量は年代によっても異なりますが、目安量は体重1kgあたり30~40ml。食事からも1日約1000mlの水分が摂取できますが、欠食することがある場合はより注意が必要です。欠食すると水分不足になりやすいため、食事は1日3食とりましょう。熱中症対策にもなります。

原因2=カルシウム不足

結石の成分はシュウ酸カルシウム結石、尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石など様々ですが、約80%はシュウ酸カルシウム結石です。尿内のカルシウム排泄量が多いことで発症する可能性が高まるのです。

カルシウムの摂りすぎが原因かというと、そうではありません。カルシウムの摂取量が多ければ、腸管でシュウ酸とカルシウムが結合して便として排出されるので、尿管でシュウ酸カルシウム結石となるリスクが低下することがわかっています。つまり、カルシウム不足は大敵です。海藻、小魚、小エビ、適量の乳製品などを毎日摂りましょう。

原因3=高タンパク食、食塩・糖分過多の食事

尿中のカルシウム排泄量が多くなると、尿管結石ができやすくなります。高タンパク食(特に動物性タンパク質の多い食事)や、味が濃く食塩の摂取量が多い食事は尿中のカルシウム排泄量を増やします。アスリートや体を鍛えている人は要注意です。

また、糖分の多い菓子や加糖飲料はカルシウムの排泄だけでなく、シュウ酸や尿酸の排泄を増加させ、尿を酸性に傾けるため尿酸結石のリスクも高めます。特に、加糖飲料によく使われている果糖は尿中のカルシウム排泄を増加させるため、果物やはちみつの過剰摂取にも注意が必要です。

原因4=油脂の多い食事

油脂の主成分は脂肪酸です。脂肪酸はカルシウムと結合しやすく、結合して便として排泄されます。そうすると、カルシウム不足と同様の状態になり、シュウ酸カルシウム結石のリスクが高まります。骨粗鬆(しょう)症の人も含め、脂っこい食事が続かないようにしましょう。

原因5=飲酒やプリン体の多い食事

飲酒やプリン体の多い食事は、痛風だけでなく尿酸結石の原因にもなります。

プリン体はレバーや白子など肉の内臓や魚介類多く含まれており、体内で尿酸に変わります。アルコール飲料は体内でのプリン体生成を促進し、腎臓での尿酸排泄を低下させます。ビールなどアルコール飲料にはプリン体が含まれているものも多く、飲酒のつまみにはプリン体の多い食品が合うこともプリン体摂取量を増やす原因です。

飲酒などで尿が酸性に傾くと、尿酸が溶けにくく腎臓から排泄されにくいため、尿酸が長く留まり尿酸結石のリスクを高めます。

一方、予防効果があるのはクエン酸です。クエン酸はクエン酸回路で代謝され、体内で重炭酸イオン(HCO3-)になり、この重炭酸イオンが尿中に十分に供給されることで、尿をアルカリ化させると考えられます。クエン酸はシュウ酸とカルシウム、リン酸とカルシウムが結合するのを抑制するため、カルシウム結石の予防に効果があります。

原因6=肥満や糖尿病

肥満や糖尿病の人は、インスリンが作用しにくいインスリン抵抗性の状態にある場合が多いため、尿を酸性に傾け、尿酸結石のリスクを高めます。肥満を解消することで、高尿酸血症や尿酸結石の予防や改善につながります。

原因7=更年期や閉経後

女性ホルモンのエストロゲンの低下は骨密度を低下させます。骨から血液中にカルシウムを流出させ、その結果、尿中のカルシウム排泄量が増加します。閉経後、エストロゲンの低下は避けられませんが、骨密度低下を抑制するために運動、屋外での散歩を推奨します。

このほかにも、尿管結石の原因は遺伝や薬剤の影響もあります。ホウレン草などのアクの成分であるシュウ酸の摂取を控えることも推奨されていますが、シュウ酸の摂取量が増えていないのに尿菅結石の罹患者が増加しているということは、その他の要因の影響が大きいと考えられます。痛くならないためにも、生活習慣に気をつけましょう。

管理栄養士・今井久美