暑くなると、食欲が低下してしまう人がいます。冷たいそうめんやサラダのみといった食事で済ませてしまうことも多くなりがちです。

摂取量が減って体重が減ることがうれしいと思う人がいますが、貧血や脱水のリスクも伴います。夏は熱産生(体温を上げる作用)が低下し、消費エネルギーも下がるため、体重は減らないけれどビタミンやタンパク質などの栄養不足により、疲れやすいと感じる方も多いですね。

暑い夏を元気に、健康に過ごすには、バランス良く食べることが大切です。食欲を湧かせるためには「おなかが空いた」という内的刺激と、「おいしそう、食べたい」といった外的刺激が必要です。具体的に説明してきましょう。

内的刺激

グレリン

食欲亢進のホルモンとして、胃から分泌される「グレリン」があります。空腹になると、この食欲ホルモン「グレリン」が分泌されて血液中を流れ、脳の摂食調節部位に作用することで食欲を刺激し、空腹感が生まれます。「おなか空いた~、なんか食べたい!」という気持ちは、このグレリンの仕業なのです。

しかし、グレリンやグレリン受容体に異常が起こると、食べても食べても満腹感が得られなかったり、逆に食欲が低下したりします。グレリンは、運動意欲にも関係しており、グレリンの分泌が少ないと運動量も少ないことがわかっています。グレリンの分泌を整え、活動的になるためには、食事のリズムを整えることが有効です。

ストレス

ストレスがあると交感神経が優位になり、消化吸収力が低下するため食欲も低下します。遊んだ後に食事を食べない子どもは、興奮が冷めずに交感神経が優位な状態だからです。心配事があったり、神経が高ぶっていて食欲がなかったりするときは、まずはリラックスしてみましょう。

外的刺激

五感

食欲を刺激するものとして、見た目、香り、温度、音、舌触り、のど越しなどがあります。例えば、目の前で焼くバーベキューや焼き肉は、匂いや焼ける音、見た目などから食欲が湧いてきます。カレーのスパイシーな香りも食欲を刺激します。

一方で、ドカンと大皿に盛ると、見た目だけでおなかいっぱいに感じることがあります。食べやすいように一口大に切って盛り付けたり、涼しげなガラスの食器を使ったりすると、食べたい気持ちが出てくることがあります。

冷たいものばかりでなく、夏こそ五感を使って食を楽しんで欲しいものです。ポリフェノールたっぷりの色鮮やかな野菜を使い、香辛料を活用し、盛り付けにもひと工夫してみてください。

食欲がなく朝ご飯を抜くと…

朝ご飯を食べていない人は、食生活を振り返ってみてください。食事時間が不規則で、プロテイン、スムージーや青汁などで済ませたり、丼ものや麺類などをかき込んだりしていませんか? 咀嚼しないで食べていると、食材の味を感じる間もなく、満腹中枢を刺激する前に食べ終わってしまうので、満足感も低くなってしまいます。

よく噛んで食べることは、口の中で食材の形や固さ、味を感じることで脳の刺激になります。噛んで食べる習慣がないと、食欲減退だけでなく過食にもつながります。いまや手軽に安価に食べられるものがたくさん出回っていますが、「バランスの良い食事」を整えて、楽しんで味わって食べることで健康を維持してもらいたいものです。

管理栄養士・今井久美