40歳を超えると、腰や膝の痛みを訴える方が増えてきます。コロナ禍で在宅が増えて腰痛になった方も多いですね。

「健康のためにジョギングやウォーキングを始めたら膝が痛くなって中断した」「腰が痛くて受診したら椎間板ヘルニアと診断された」という話はよく聞きます。また、「背中が痛くて受診したら脊柱管狭窄症だった」や、「更年期で骨密度を測定したら低いと言われ、心配になった」ということもあります。

腰痛は国民病、大半は骨や関節の異常

厚生労働省による2019年の国民生活基礎調査の結果では、病気やケガの自覚症状として男性1位が腰痛、女性では肩こりに続く2位が腰痛であり、「腰痛は国民病」とも言われています。軽度な場合、外見からは異常はわからないため、痛みを感じて初めて気づく人も多いでしょう。その痛みの大半は、骨や関節の異常による慢性的な痛みです。

閉経10年後の女性の半数が骨粗しょう症

女性は更年期以降、特に閉経後に骨密度が低下する傾向があります。日本骨代謝学会では、閉経後10年経過した女性の約50%が、骨粗しょう症の診断基準を満たしているとしています。約半数の人の骨量が、若年(20~44歳)平均骨量の70%以下になっているということで、これは男性よりも 2~3倍多い数値であり、60歳代の女性では約5人に1人、70歳代では約3人に1人が骨粗しょう症といわれています 。

「健康診断で身長が低くなった」「膝がO脚気味」という症状がある人は要注意。いつまでも自分の足で、元気に自由に歩くためには骨や関節疾患の予防が大切です。食事を含め、生活面で意識したいポイントをまとめます。

骨や関節疾患予防のためにできること

1、食事(食事摂取基準を参考にする)
摂取したいもの
・カルシウム=骨の材料
(小松菜、水菜、大豆製品、海藻、乳製品など)
・ビタミンD=カルシウムを腸管から吸収促進
(小魚、卵黄、キノコ類など)
・ビタミンK=骨形成促進、骨吸収抑制、コラーゲン生成促進
(納豆、ブロッコリー、ホウレン草、海藻など)
・ビタミンE=血流改善
(ナッツ類、ゴマ、アボカド、カボチャなど)
・タンパク質の適量摂取=骨のコラーゲンや筋肉の材料
※過剰摂取するとカルシウムの尿中排泄量が増加
・エネルギーの適量摂取=骨格筋形成にはエネルギーが必要

過剰摂取を避けたいもの
・リン=カルシウムの吸収を抑制
(インスタント食品、加工食品、加工肉、タンパク質の多い食品)
・食塩=骨格中のカルシウム保持を低下、カルシウムの尿中排泄量増加

注意点
・肥満しない=骨や関節に負荷がかかる
・極端な食事制限=低栄養により骨密度低下、筋力低下
・飲酒は適量=1合程度、過剰の場合尿量増加のためカルシウム排泄量増加、骨折のリスク増加
・多量のコーヒー=利尿作用によりカルシウムの尿中排泄量増加、コーヒー1日5杯以上は注意

2、運動
・筋肉トレーニング(腹筋だけでなく、背筋も鍛える)
・ストレッチ
・ウォーキングなどの有酸素運動(1日10分以上、可能なら毎日)

3、生活
・同じ姿勢を続けない
・猫背・前かがみにならない(椅子の座り方に注意)
・前屈、中腰、ひねりなどの不自然な姿勢をとらない
・適度な日光浴(夏なら木陰で30分、冬なら手や顔に1時間程度)
・喫煙しない(血流が悪くなる、女性ホルモンの分泌低下により骨形成低下)

腰痛の原因には、骨や関節の疾患だけでなく、感染性脊椎炎や癌の脊椎転移、大動脈瘤、尿路結石などのこともあります。痛みがある場合は、まず整形外科を受診しましょう。

管理栄養士・今井久美