<セルフモニタリングのすすめ(1)>
特定保健指導や栄養指導をしていると、相談者から「食事を控えているのに痩せない」「運動を始めたのに体重が減らない」とよく言われますが、食事療法や運動の評価をするためには、数値での確認が必要です。健康で、見た目にも格好良い体になるために努力していても、効果が実感できないとモチベーションが下がり、継続できませんよね。そこで2回に分けて、自分でできるモニタリング方法「セルフモニタリング」について紹介します。
体重測定
「なんだ体重か」と思われる人もいるでしょうが、毎日、体重を測定している人は意外と少なく、健康診断の時以外、体重を量らないという人も多いのです。自宅に体重計がない人はすぐに購入しましょう。健康を維持したいなら安い投資です。
1日の中でも、摂取した食事や水分量によって体重変動があります。起床後、排尿の後(朝食前)や夕食後の入浴時など、同じ時間帯で同じ条件で測定することをすすめていますが、休日に何度か測定し、体重の日内変動を確認するのも良いでしょう。
例えば、スポーツ前後で計測し、運動中の水分摂取量が十分かどうかの評価に利用することもできます。ただ、体重を減ったのを見たいがために、水分摂取を我慢して運動したり、サウナに入ったりするのは脱水のリスクがあるためやめましょう。
体脂肪率
家庭用の体重計には、体脂肪率が測定できるものも多く売られています。それらは主に、体内に微弱な電流を流して電気抵抗(インピーダンス)から脂肪の割合を算定する方法を利用しているため、体内の水分量に左右されます。食事の前後や、運動や入浴後の発汗後などでは数値が異なるため「正確ではない」と考える人もいますが、推移を確認するには十分な機能です。
「運動を始めたのに体重が減らない」という人は、ぜひ体脂肪率を測定してください。減らしたいのは体重ではなく体脂肪であり、筋肉は減らしたくないはずです。体重が減っていなくても、体脂肪率が減れば筋肉量が増えていると評価でき、運動の効果を実感できるでしょう。
体温
コロナ禍で体温を測る機会が増え、自分の平熱がわかるようになりましたが、1日における体温変動も測ってみることをおすすめします。
就寝中は体温が低下しますが、起床後に活動して交感神経が優位になると体温は上昇します。また、食事を摂ると体温が上がります。私の場合、起床後と朝食後は0.5度以上の体温差があるので、朝食によって熱を産生していることを実感します。たくさん食べるけれど痩せている友人は、食後の体温上昇が大きかったことを覚えています。
体温が低い人は基礎代謝も低い場合が多いので、太りやすいと言えます。ストレスや睡眠不足、生活リズムの乱れ、栄養不足でも体温は低下します。原因が判らずに体温が低い場合は、甲状腺機能低下症の場合もあるので、他に症状がないか確認してみましょう。
歩数
スマートフォンや携帯電話にも歩数計の機能が付いているものが多いため、持ち歩いている人は歩数を確認してみましょう。最近ではスマートウォッチを使っている人もおり、携帯電話よりも身につけている時間が長いので、より実際の歩数に近くなります。
厚生労働省が提唱する健康施策「健康日本21(第二次)」では、1日の平均歩数を「成人男性9200歩、成人女性8300歩程度」を目標にしています(70歳以上の高齢者は男性6700歩、女性5900歩)。9200歩を達成するには、約1時間半の歩行が必要です。日々の生活の中でも歩数を増やしましょう。
心拍数
運動強度を測る指標として心拍数が利用でき、最近のスマートウォッチでは、この心拍数から推定消費エネルギーを算出しています。年代や性別により、適切な運動強度が異なりますが、歩いていても痩せないと感じている人は、心拍数を測定してみましょう。
単に歩いたとしても脂肪燃焼する強度まで心拍数が上がっていないこともあります。その場合はウォーキングのペースを上げることで痩せやすくなります。一方で、スポーツ心臓のように、アスリートは安静時心拍数が低い場合もあるため、運動時だけでなく、安静時の心拍数も確認しておきましょう。
食事記録
食事内容を記録するレコーディングダイエットが流行したことがありましたが、食事を記録したり摂取量を計算したりすることは、食べている食事内容や摂取エネルギーを確認できるので効果があります。最近では、食事内容を入力すると摂取エネルギーがわかるアプリなどもあり、食事を記録しやすくなりました。栄養表示を確認する習慣も身に付けば、食事を選ぶ際にエネルギーや栄養素を意識するようにもなるでしょう。
健康的に痩せるには自分を数値化し、確認し続けることが大切です。今では計測ツールもさまざまあり、体重計、スマートウォッチ、スマートフォンやパソコンを接続すれば自動で記録したり、グラフ化してくれたりといった便利な機能がたくさんあります。まずは計測し、数値を確認することから始め、それを習慣づけていきましょう。