健康診断で、LDLコレステロール値(悪玉コレステロール)や中性脂肪値が高いと指摘されたことのある人は多いでしょう。令和元年の国民健康・栄養調査結果では、脂質異常症を疑われる人が2割近くおり、最近10年間でみると、男性は有意な増減はみられないものの、女性は有意に増加しています。

脂質異常症の疑いは日本人の2割も

日本動脈硬化学会では、以前は総コレステロール値220mg/dl以上で脂質異常症(高脂血症)と診断していました。今では、悪玉(LDL)と善玉(HDL)の違いを明確にし、下記にあるように「LDL(悪玉)コレステロールが多い場合」、「HDL(善玉)コレステロールが少ない場合」、「トリグリセライド(中性脂肪)が多い場合」という3つのタイプにわけ、数値を明確にしています。

脂質異常症の診断基準(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年度版より)

・LDLコレステロール(悪玉)140mg/dl以上=高LDLコレステロール血症
・HDLコレステロール(善玉)40mg/dl未満=低HDLコレステロール血症
・トリグリセライド(中性脂肪)150mg/dl以上=高トリグリセライド血症
・Non-HDLコレステロール(※)170mg/dl以上=高Non-HDLコレステロール血症
(※)総コレステロールからHDLコレステロールを除いたもの

脂質異常症は動脈硬化の要因であり、脳梗塞や心筋梗塞の原因になります。脂質異常症を予防・改善するためには、生活習慣の改善が必要です。禁煙、運動(週3回以上、可能なら毎日30分以上の有酸素運動)を推奨するほか、食事改善も重要です。

動脈硬化を予防するための食事療法

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年度版によると、動脈硬化疾患を予防するための食事療法は次のように定められています。

動脈硬化疾患を予防するための食事療法

1、過食に注意し、適正な体重を維持する
・総エネルギー摂取量(kcal/日)は、一般に目標とする体重(kg)×身体活動量(軽い労作で25~30、普通の労作で30~35、思い労作で35~)を目指す
2、肉の脂身、動物脂、加工肉、鶏卵の大量摂取を控える
3、魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を摂取する
・脂肪エネルギー比率を20~25%、飽和脂肪酸エネルギー比率を7%未満、コレステロール摂取量を200mg/日未満に抑える
・n3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やす
・トランス脂肪酸の摂取を控える
4、未精製穀類、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆および大豆製品、ナッツ類の摂取量を増やす
・炭水化物エネルギー比率を50~60%とし、食物繊維は25g/日以上の摂取を目標とする
5、糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品(菓子類、清涼飲料水含む)の大量摂取を控える
6、アルコールの過剰摂取を控え、25g/日以下に抑える
7、食塩の摂取は6g/日未満を目標にする

「家族性高コレステロール血症」とは

しかし、どんなに食事や運動を頑張っても数値が改善しない人がいます。遺伝的にLDLコレステロール値が高くなる「家族性高コレステロール血症」の人です。

以前は500人に1人と言われていましたが、最近では300人に1人程度もいるとのこと。一般的にまだこの病気が知られていないこともあり、診断されていないものの、実は家族性高コレステロール血症であるという方が多くいるといわれています。

若いときから動脈硬化が進んで、血管が細くなったり詰まったりしてしまうので、早期に受診と治療が必要になります。診断されたとしても「遺伝だから数値が高いのは仕方ないこと」と放置するのではなく、生活習慣の改善をする必要があります。

家族性高コレステロール血症チェック

自分が家族性コレステロール血症ではないか、次の項目をチェックしてみてください。

15歳以上の場合
1、高LDLコレステロール血症(未治療時のLDLコレステロール値180mg/dl以上)
2、腱黄色腫(手背、肘、膝やアキレス腱など皮膚表面に近い腱が太くなる)、あるいは皮膚結節性黄色腫(黄色または黄褐色の腫瘍状の結節や発疹)
3、家族性コレステロール血症あるいは早発性冠動脈疾患(男性は55歳未満、女性は65歳未満で狭心症や心筋梗塞に罹患)の家族歴(両親と子供、兄弟姉妹)

小児(15歳未満)の場合
1、高LDLコレステロール血症(未治療時のLDLコレステロール値140mg/dl以上、複数回確認)
2、家族性コレステロール血症の家族歴(親または兄弟姉妹)
3、親のLDLコレステロール値が180mg/dl以上または早発性冠動脈疾患の家族歴(祖父母または親)

まずは受診、検査が保険適用に

2022年から家族性高コレステロール血症の遺伝子学的検査が保険適用になりました。上記に1つでも当てはまる人は、できる早く受診しましょう。

また、家族性コレステロール血症ではなくても、特に女性は閉経後にLDLコレステロール値が上がり、動脈硬化疾患が増加します。数値が高い場合は生活習慣の改善も心がけつつ、一般的な内科(すでに進行が見られ、心血管疾患の疑いがある場合は循環器内科や血管外科が専門医となる)を受診することをおすすめします。

管理栄養士・今井久美