身近な調味料としておなじみの「酢」は、「体に良い」「やせる」といったダイエットや美容、健康にうれしい効果があるといわれています。具体的には、血糖値の上昇抑制、血圧低下、内臓脂肪燃焼、疲労回復などです。

酢を摂取するだけで誰でもやせるのか

実際に、「白米よりも酢飯の方が食後血糖の上昇が抑制された」「酢に含まれるアミノ酸には脂肪燃焼促進作用がある」「酸味によって減塩作用があり、血圧が下がる」など、根拠が明確になっているものはあります。また、酢を摂取することで消化管のぜんどう運動が促進され、便通が良くなります。

ただし、それらの報告の中には、内臓脂肪が減少した対象者が肥満気味の人に限定されているものや、運動と酢の摂取を組み合わせているものもあり、全ての人が単に「酢を飲むだけでやせる」わけではありません。酢は、やせる魔法の飲み薬ではないのです。

酢はそのまま飲むよりも料理に

酢をとる適量は、毎日大さじ1杯(15ml)と言われており、ドレッシングやソース、つけだれに加えたり、ピクルスや南蛮漬けなどの味付けに取り入れたりすると良いでしょう。料理に酢を取り入れることで、酢酸の酸により、鉄やカルシウムをはじめとするミネラルの吸収も助けてくれます。

では、調味料の酢をそのまま飲んだらどうなるでしょうか。強い酸によって歯のエネメル質が溶けたり、食道が荒れてしまったりする可能性があります。

酢の入った市販のドリンク類は、酸味だけでは飲みにくいため糖類が入っているものも多く、その結果、エネルギー摂取量が増えて太ってしまう危険性もあります。酢を飲む場合は薄めたり、牛乳などと割って飲むこと、市販の酢入りドリンクを飲む場合は、エネルギー表示を確認してエネルギーが少ないものを選ぶことをおすすめします。

発酵食品の酢には様々な種類

酢は糖分をアルコール発酵させ、さらに酢酸まで発酵させて作る発酵食品です。米や麦、トウモロコシといった穀物から作る穀物酢が一般的ですが、米のみから作る米酢、ブドウ果汁から作るワインビネガー、リンゴ果汁から作るリンゴ酢のように果実酢もあります。

玄米など精製度の低い米や麦から作られる黒酢は、アミノ酸やビタミン類が他の酢よりも多く含まれるとして人気です。他にも、トマト酢、タマネギ酢、はちみつ酢、ブルーベリー酢、柿酢や、東南アジアにはココナッツビネガーもあるそうです。

また、原材料の風味が残り、料理だけでなく菓子にも使えるものもあります。塩分だけでなく糖分の摂取量を減らすためにも「酢」を上手に活用すると良いですね。

減量したい人は、現在の食事から何かを減らすことより、何かをプラスしてやせようと思う人が多いようです。酢もそうですが、「やせる」「体に良い」と言われる食品を新たに取り入れる場合、今までの食事にプラスするよりも、今まで食べてきたものに置き換えるようにすると、エネルギー過多になるリスクが下がるだけでなく、摂取エネルギーを減らせる場合もあり、より減量効果が期待できます。

取り入れたら継続することも大切です。ダイエットや健康のため、長期的に取り組みましょう。

管理栄養士・今井久美