2年以上続いた新型コロナウイルスによる自粛生活は、徐々に制限が緩和されていく方向ですが、コロナ前の生活に戻るというよりも、新しい生活スタイルに変化していきます。

コロナ禍では活動量が減り、体重が増加してしまった人も多いのではないでしょうか。運動不足改善のため、ここで改めて、健康のためにどれくらい運動するといいのかを見ていきましょう。

成人は毎日60分の歩行運動

身体活動の指標としては、厚生労働省から2013年に「健康づくりのために身体活動基準」が出されています。ここでは、「成人(18~64歳)は歩行またはそれと同等以上の身体活動を毎日60分。さらに、息がはずみ汗をかく程度の運動を毎週60分」することを推奨しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xppb.pdf

また今年4月には、WHO(世界保健機構)が2020年に作成した「WHO身体活動および座位行動に関するガイドライン(日本語版)」が発表されました。コロナによるものというわけではありませんが、座位が増加しつつある現在の生活スタイルを考慮し、年齢別、妊婦や障害のある方など、対象ごとに身体活動の指標を提示しています。
https://www.nibiohn.go.jp/eiken/info/pdf/WHO_undo_guideline2020.pdf

この指標では「成人の場合、座りすぎは、総死亡率、心血管疾患死亡率、がん死亡率、心血管疾患、がん、および2型糖尿病の発生などといった悪影響を及ぼす」とも記載されており、座位時間の減少が推奨されています。世界的に見ても、日本人は座位時間が長く、座りすぎのリスクが大きいと言われているので、意識して体を動かすことは必要です。

WHOによる身体活動の指標

WHOのガイドラインにある成人(18~64歳)の身体活動の指標を見てみましょう。

1、有酸素性の中強度(3.0~6.0MET)の身体活動を少なくとも週150~300分、または高強度(6.0MET以上)の有酸素性の身体活動を少なくとも75~100分行う

MET(メッツ)とは運動強度の単位で、3.0 METとは、平地を毎分67mで歩く普通歩行程度の運動です(1kmを約15分で歩くペース)。週150分以上の身体活動は、毎日22分以上、普通に歩くことで達成できます。

2、さらなる健康増進のために、主要筋肉群(脚、背部、腹部、胸、肩、腕)がすべて関係する中強度以上の筋力向上活動も週に2日以上行う

時間や回数などは記載されていませんが、「ややきつい」と感じる中強度の筋トレを週2回、行うよう推奨しています。腕立て伏せや腹筋など自重トレーニングを行うと良いでしょう。

3、さらに健康上の利益を得るため、中強度の有酸素性の身体活動を300分、あるいは150分の高強度の有酸素性の身体活動を行う

歩行時間を1日40分以上に増やしたり、早歩きにしたりして時間と運動強度を高めると良いようです。

4、座りっぱなしの時間を減らし、どんな強度(MET3.0未満でも良い)の運動でも良いので、身体活動を増やす

運動初心者や体を動かす習慣がない人は、家庭の中でもできる運動から始めてみてください。運動不足を感じているなら、ウオーキングに取り組みましょう。毎日60分歩くことは難しくても、1日22分以上歩くことから始めて、慣れてきたら時間を増やし、強度を上げていってください。無理のない範囲で継続することが大切です。

慢性疾患を有する人のガイドラインも定められていますので、病院を受診している方はこの指標を参考にしつつ、医師の指示に従ってください。

※MET表は2013年に「健康づくりのために身体活動基準」の参考資料2-1、−2に記載

管理栄養士・今井久美