寒い時期は、温かい料理が食べたくなります。サラダよりも煮物、刺身よりもシチューといったように煮込み料理がおいしく感じられるのも冬ならではですね。今回は、そんな煮物をよりおいしく作る加熱のポイントをお伝えします。

味を染みこませるために温かい状態を保つ

冬が旬の大根やカブ、レンコンといった根菜は、まず柔らかくなるまで高温で加熱しましょう(下ゆで)。野菜の組織(セルロースやヘミセルロース)が壊れた後に味が染み込みやすくなります。

味を染み込ませるには高い温度を保ちつつ、時間も必要です。味が濃くなり過ぎないように薄味の煮汁で、弱火でコトコト煮込むとおいしく出来上がります。煮終わったら火を止めて、そのまましばらく放置して冷ますことで中まで味が染み込みます。野菜が柔らかくなったからといって、味が染み込む前に冷蔵庫に入れて冷やすようなことはやめた方が良いですね。

根菜の煮物
根菜の煮物

肉や魚は柔らかくなったら火を止める

肉や魚などのタンパク質の多い食材は、加熱し過ぎると固くなり、バサバサの食感になってしまいます。加熱によって肉汁が出てしまうことで、うま味も減ってしまいます。

表面を強火で焼き固め、肉汁が出にくい状態になってから煮汁に入れて加熱し、中まで火が通ったら加熱を止めて、味が染み込むのを待つのが理想です。野菜と一緒に煮込む時は、加熱した肉や魚を一旦取り出し、野菜が柔らかくなったら肉や魚を鍋に戻して火を止めると良いでしょう。

肉は50℃を超えると、温度が上がるにつれて固くなっていくので、加熱温度を55~70℃の低温にして調理するという方法もあります。しかし、この温度帯では食中毒のリスクもあるので衛生管理が重要になります。

一方で、高温で煮込んだ方がいい肉もあります。牛すじ肉などはコラーゲンが多く、線維状になっているのが固い原因です。このコラーゲンは70℃以上で壊れ、ゼラチン化するため、コラーゲンの多い固い肉は煮込んだ方が柔らかくなります。

また魚は、加熱によって肉ほど固くはならないものの、赤身よりも白身の方が固くならないため、煮物に向いています。赤身の魚はパサつきがちなので、煮汁を多めに盛り付けましょう。

おでんの具材は味なしで加熱してから

おでんは様々な具材を入れることで、うま味の相乗効果で味わい深くなります。そのままで食べられるさつま揚げなど練製品から、しっかり加熱が必要な大根など、具材によって加熱時間に差があります。味がついた煮汁の中で煮込むと固くなってしまう食材や、長時間煮込むと煮汁が煮詰まってしまう可能性もあります。

冬においしいおでん
冬においしいおでん

そのため、各具材を食べられる固さにまで下ごしらえするのがコツ。大根を下ゆでする理由はそこにあります。それらを調味した煮汁に入れ、沸騰させない程度の温度でグツグツ煮込むとおいしさがアップします。具材を入れることでうま味が増すため、煮汁は薄味に調味しておくと良いでしょう。

ちょっとしたひと手間で煮物の味が抜群に上がり、完成度が高まります。いつも作っていても「理想の味にならない」と思っている方は、ぜひ試してみてください。

管理栄養士・今井久美