外国出身力士の活躍が著しい相撲界だが、いかにして日本の食事に適応して、体づくりを進めているのか。モンゴル出身の十両水戸龍(27=錦戸)は、14歳のときに照ノ富士、逸ノ城らとともに来日。高校相撲の強豪、鳥取城北高に留学して、力士としての基礎をつくった。

大相撲名古屋場所千秋楽で、水戸龍(右)は若元春を押し出しで破り十両優勝を決める(撮影・小沢裕)
大相撲名古屋場所千秋楽で、水戸龍(右)は若元春を押し出しで破り十両優勝を決める(撮影・小沢裕)

モンゴル出身の力士は生魚などに苦戦するイメージが強いが、水戸龍も例外ではなかったという。来日当初は生魚のほかに納豆、みそ汁、からし、ワサビは大の苦手だった。「ワサビを『おいしい』と言っているのが不思議だった。(日本人は)わさびをおいしいと思って食べているというより、鼻にくる刺激が面白いから食べているんだと思っていました」。それでも、3年生になるまでには日本の食事にも順応。卒業する頃には、苦手だった納豆も「大好き」になった。

大相撲初場所7日目に土俵入りする水戸龍
大相撲初場所7日目に土俵入りする水戸龍

高校時代はとにかく食べる「量」を意識した。「太る努力は死ぬほどしたと思う」と水戸龍。高校時代は食べることが「あまり好きじゃなかった」というが、週に1回の楽しみがあった。毎週日曜の夜は寮で食事が出ないため、部員と一緒に外食をする。最も足を運んだのは、同校からほど近くにあった飲食店「ステーキガスト」。「1000円ちょっとのステーキを頼んだら、パンやお米が食べ放題だった。よく逸ノ城と一緒に行って、お店の人にも(存在を)覚えられるくらいだった」。週1の楽しみも体作りのモチベーションとなったのか、来日当時75キロほどだった体重は、卒業までには150キロを超えていた。

高校卒業後は日大を経て、角界に身を投じた。17年夏場所に幕下15枚目格付け出しでデビューすると、所要4場所で新十両昇進。そこから21場所連続で十両在位、約3年半もの間、新入幕に届かない中で、7月の名古屋場所では12勝3敗で初めての十両優勝を果たして、出世に向けて弾みをつけた。

水戸龍のある日の晩ご飯。右上はモンゴルの蒸しギョーザ「ボーズ」、左下は「モンゴル風うどん」(本人提供)
水戸龍のある日の晩ご飯。右上はモンゴルの蒸しギョーザ「ボーズ」、左下は「モンゴル風うどん」(本人提供)

現在の身長は187センチで、体重は180キロ中盤で安定している。来日して10年以上が経過するが、今でも母国の料理は恋しい。モンゴルの蒸しギョーザ「ボーズ」は普段からよく食べているという。体作りのコツは「楽しみながら食べること」と水戸龍。「ステーキガスト」に通った高校時代から、その思いは変わっていないかもしれない。【佐藤礼征】