今秋ドラフト上位候補で最速152キロ右腕の市和歌山・小園健太投手(3年)は日々の食事がパワーの源だ。母優佳さんが手がける料理で1日5合を食べる時期もあり、184センチ90キロの恵まれた体に成長した。今年3月のセンバツでも実力を示し、NPBのスカウトも熱視線を寄せる。同校は15年から「食育こーぼ」(京都・精華町)の食育指導を受け、食を重視する。勝負を勝ち抜くための「エースの食事」に迫った。

高校野球夏の地方大会で県和歌山との2回戦に先発する市和歌山・小園健太(撮影・和賀正仁)

高校入学後、自ら関心持ち食事を改善

試合終盤になっても150キロ近い速球の威力は衰えることなく、最後まで投げきる。小園は豊富なスタミナを使いながら、敵を圧倒してきた。その源になるのが栄養だ。力強く体を動かせる、頑丈な土台を築く。

小園 中学生のころはそんなに食事を考えていませんでした。高校に入ってから、試合前日に揚げ物をとらなかったら、次の日によく動けるようになった。自分から関心を持って取り組んだからこそ、いまのこの体があると思います。高校に入ってから、大きく意識が変わったと思います。

市和歌山・小園健太投手の平日の食事は色彩豊かで食欲も増す。真ん中上からチャーハン、みそ汁、納豆、牛乳は朝食セット。おにぎり玉4個と魚肉ソーセージ、バナナは補食。昼食は韓国風ピリ辛豚そぼろ丼でチーズも食べる。水筒、ペットボトル2本はすべて麦茶で、ペットボトル2本は凍らせることで保冷剤代わりの工夫。左下の粉末はサプリメント。細やかな栄養摂取を心掛ける(写真提供・母優佳さん)

3月のセンバツ出場時、アルプス席に応援に来ていた優佳さんは「あの子の分で1日5合です。食育で揚げ物はいけないと教わりました。毎朝、バナナや野菜を搾ったものを飲んでいます」と話していた。同校は「食育こーぼ」のサポートを受け、月に1度、栄養指導を受ける。ときには親も相談する。トレーニング、栄養、休養のサイクルがバランスを欠けばパフォーマンスを発揮できない。とりわけ、食事はすべての根本になる重要な要素だ。

「食育こーぼ」では体重や体脂肪率を測定するだけでなく、体の各部位の筋肉量や筋肉率も測定する。ポジションなどでアドバイスを変える細やかさがある。南真人代表は夏の甲子園につながる和歌山大会前の7月上旬に指導。現状に即したメニューを提案した。

「食育こーぼ」の南真人代表は約40校の学校で栄養指導を行う。真上には市和歌山のユニホームも飾る

「いま、暑くなって、すごく食べにくいシーズンですよね。カロリーとかタンパク質量が減ってしまう。体重が減少してしまう。うどんでも、ぶっかけうどんよりも、タンパク質を入れたうどんにした方がいいです。ゆで卵を半分に切ったり、魚肉ソーセージをスライスして。うどんのなかに入れて温玉うどんとか、豚しゃぶうどんとかですね」

市和歌山で食育指導する「食育こーぼ」が7月の指導で用いた資料(資料提供・食育こーぼ)

市和歌山で食育指導する「食育こーぼ」が7月の指導で用いた資料(資料提供・食育こーぼ)

食欲増進のため、あの手この手を使う。和歌山は梅の名産地だ。南代表は「たとえば、朝食を食べる前に梅干しを食べてもらう。唾液の分泌を促進するので、唾液が出やすいと食べやすい。梅干しを食べている子は朝からしっかり食べられて、この時期でも体重が結構、増えますね。酸っぱい系を入れてもらう」と説明する。

小園 僕の場合は晩ご飯を食べる前に、もずく酢ですね。今年の夏は夏バテしないために、もずく酢を食べています。それと、カルシウムが足りていないと説明を受けたので、朝と寝る前は牛乳を絶対に飲むようにしていますね。

市和歌山のエース小園健太投手は栄養に気を配り、必要に応じてサプリメントも摂取する

こまめな補食で炭水化物量をキープ

夏は発汗量が増え、体力を消耗する。「体重を落とさない」がもっとも重要なテーマになる。南代表は浦和学院(埼玉)のエースとして甲子園に出場した。だからこそ、競技者の肌感覚が分かる。「体重が落ちるチームは結局、試合も負けてしまうチームが多い。体重を変えないのが絶対のルールです」。

運動のエネルギー源は基本的に炭水化物だ。だが「エネルギー不足に陥れば、筋肉を分解してしまう」という。パフォーマンスは下がり、故障のもとになる。そこでナインに提唱するのが「補食」だ。

「間食として、毎回の授業の休み時間ごとに食べるピンポン球サイズのおにぎりや、お団子やバナナを持ってきてもらう」

小園が日々、学校に持って行く弁当は圧巻だ。早朝から調理する優佳さんは言う。「普段、授業があるときはご飯と別におかずがあります。今日は、韓国風ピリ辛豚そぼろ丼です。授業が終わって、午後から練習なので丼にしました。朝もチャーハンとか、うどんとか、パスタとか。なるべく続かないようにしているんです」。豊富なレパートリーで飽きさせない工夫を凝らす。これも母の愛情だ。

市和歌山・小園健太投手は平日、朝食セットや昼食、補食を入れた保冷バッグを持って通学する。左上の凍らせた麦茶は練習開始頃に解凍され、保冷剤代わりになる(写真提供・母優佳さん)

昼食の弁当以外にも、補食となる小さなおにぎりを5、6個持参する。練習の合間に食べるのだという。

小園 自分は体重をあまり増やすタイプじゃない。補食の量もそんなに多くない。補食の中身は炭水化物だけじゃなくて、タンパク質もとります。サラダチキンとか魚肉ソーセージとかも意識してとっています。練習前にバナナを食べたりしています。補食は、授業の合間ではなく、練習が始まってから、1時間くらいの間隔で小さいおにぎりを1つずつ食べています。僕は結構、少ないほう。1日で5、6個くらいですね。

常に炭水化物の量をキープする状態だ。小さなおにぎりなら、消化は早く、胃腸への負担も少なくなる。

登板前日は高糖質の食事でエネルギー蓄える

炎天下の試合は過酷だ。1試合で100球以上を投げる先発投手は、他のポジションに比べてエネルギーの消耗が激しい。「1回から9回で3キロくらい体重が落ちる」と南代表。登板前日から、高糖質の食事を提案する。「白いご飯とおかずがあったら、そこにみそ汁におもちを入れてもらったり、間食のおにぎりを増やしてもらう」。エネルギー源となる炭水化物を普段よりも多めに摂ることで、体内に蓄える。試合日も母が気遣う。優佳さんは「試合の日はあまり胃に負担をかけないように、うどんであっさりにしています」と説明する。剛速球の源は食にある。

市和歌山で食育指導する「食育こーぼ」が7月の指導で用いた資料(資料提供・食育こーぼ)

市和歌山で食育指導する「食育こーぼ」が7月の指導で用いた資料(資料提供・食育こーぼ)

周囲の支えで「エースの食事」は日々、充実している。和歌山大会の初戦後に「みんなで日本一を目指します」と言った。頂上への道のりは高く険しい。力強く登り切るためには胃袋がカギを握る。【酒井俊作】