日大豊山(東京)野球部は、コロナ禍の新たな取り組みで、逆境を力に変えようとしている。

感染予防の観点から、チームとして補食の用意をすることができず、寮のない日大豊山は食事の管理がすべて選手任せになってしまう。福島直也監督(35)はあらためて自己管理能力の大切さを実感したという。「口で言うだけではやらない。だから、やるようになるシステムを作ろうと思ったんです」。そこで、以前から取り組んでいた野球ノートを徹底。カスタマイズできるチーム独自の野球ノートを取り入れ、1年前から毎日の体重を記すグラフや、毎日食べたものを書くページを増やした。「毎日、何を食べたか振り返ることができて、体重の変化がハッキリわかるんです」。文字や数値で可視化することで今の自分を見つめ直し、意識を高めていった。

この冬、食事とトレーニングで4キロ増の日大豊山・米田暁充外野手(3年)。昨秋は背番号18も、今春は打順は2番でレギュラーを獲得した

昨冬は、自粛期間に黒川太一部長がズームを使って「食事学」も指導。登校日や練習が行われる日は自宅から補食として好きなものを持参。1日練習では練習メニューに補食の時間をつくり、取り組んだ。平日練習も、選手たちは自主的に練習の合間に、自分のタイミングでベンチに入り、持参したおにぎりやパンをパクパク口にする。「当たり前のように補食をとっているし、指導者が言わなくても補食をとる習慣が身について、体重表には成果が表れています」。ひと冬で平均3~5キロ増。日常生活でも、コンビニではタンパク質の多いもの、おにぎりの具はシャケを選ぶなど、選手の意識は確実に上がっている。

福島監督がデザインした日大豊山の野球ノート。曼荼羅(まんだら)チャートや、月間目標シートなど、内容が盛りだくさんのノート

野球ノートで心を通わせた。活動自粛の期間のノートのやりとりは、指導者にとっても選手の現状、考え方、生活を把握し、頻繁に会えない中でも的確な声掛けのきっかけにもなった。「体重表を見て、あれ、体重が増えてないな。どうしたんだろうと気になる。食生活から選手の生活が見えてくるんです」。ノートをきっかけに監督と選手の言葉のキャッチボールが増えた。「日々の生活や思っていることを文字に表すことによって、日に日に選手たちの書く内容が変わってくる。気持ちが入ってくるんですよ」。食事を通じた野球ノートで、選手の成長を感じている。

野球ノートの1ページには1週間分。毎日、食事、練習、思ったことなど。無理なく書けるスペースになっている
毎日の体重をグラフに記入。1カ月の変化がわかる。太線は甲子園出場校の平均体重

真の強さを追求する。福島監督は日ごろから「バットを持ってない時間を大事にしろ」と選手たちに声をかけている。ただ大きくするだけではなく、トレーニングと補食でバランス、タイミングなど、最大の出力を生む体作りをした上で技術を磨く。「(体の)中身を作ることが大切。それも含めて、自己管理能力が必要なんです」。やらされる野球ではなく、自分を理解した上で高みを目指す。

黒川部長が作成した「野球選手のための食事学」。選手たちはこの資料をもとに、日々の食事と向き合っている

昨夏の東東京大会、昨秋の東京大会と、ともに8強入りを果たし、福島監督も「上を狙える」と手応えを感じている。目指すは21年ぶりの甲子園出場へ。日大豊山の挑戦は続く。【保坂淑子】