19年秋の埼玉大会で準優勝し、関東大会出場。8強入りを果たした西武台(埼玉)野球部。激戦区、埼玉を勝ち抜くために、食育にも積極的に取り組み、日々成長。甲子園出場へあと一歩と近づいている。

グラウンドの片隅でモグモグモグモグ…。西武台の選手たちは、練習メニューの合間、手が空くと、すぐにグラウンド横に座り、バックからおにぎりを取り出し口にほおばった。

グラウンドの片隅で補食のおにぎりを頬ばる選手。(左から)青山廣大選手、深田翔太選手、小島玄宗選手
グラウンドの片隅で補食のおにぎりを頬ばる選手。(左から)青山廣大選手、深田翔太選手、小島玄宗選手

寮がない西武台は、お昼のお弁当以外に、5つのおにぎりを持参。それぞれが好きなタイミング食べるのがルールだ。主将の武井大智外野手(3年)は「おにぎりは食べやすいし、自分のおなかが空いたタイミングで口にできるからいいんですよ」と、無理なく補食に取り組んでいる。登校して1個。休み時間にも1個ずつ食べ、お昼はお弁当。練習中、練習後にも1つずつ。「おかげで体重が増えてきました」と手応えを実感している。

激戦区埼玉県を勝ち抜くために。その方法を模索したことがきっかけだった。河田創太監督(37)は「強豪校と比べると体つきが違う。大きければいいってものではないですが、細くともしっかり筋肉がついている体にしたい。技術で劣っている、意識も劣っている、食育も劣っているなら、勝ち目がないですから」と、食育に取り組んだ。

お昼は自宅から持参したお弁当。タッパーにはたくさんのご飯。(左から)山木優宏選手、田中祐己選手、才田翔也選手、村田大貴選手、大石拓選手
お昼は自宅から持参したお弁当。タッパーにはたくさんのご飯。(左から)山木優宏選手、田中祐己選手、才田翔也選手、村田大貴選手、大石拓選手

4年前はチームで2キロご飯にチャレンジした。大きな(プラスチックの)食品保存容器にご飯を2キロ入れ登校。授業、練習の合間に食べたが、なかなかご飯が進まない。苦しそうな表情をして食べている選手たちを見て、食事からトレーニングにシフトした。ウエートの量の増やし、走り込みの量を減らしてトレーニングで筋肉を肥大させる。昨冬は週3日をトレーニングにあて、他の日で技術練習と走り込みのメニューに取り組んだ。

しかし、コロナ禍が変化を生んだ。変則的な練習時間もあり、選手の体重が減る一方に。そこで、今年に入りおにぎり5個作戦を決行した。全体的に体重も増え「見た目は細いですがガッチリした子が増えてきた」と、河田監督は手応えを感じている。

プロテインメーカーが作成した選手の食事データ
プロテインメーカーが作成した選手の食事データ

現在は、プロテインメーカーの協力を得て、年に1度、食育指導の講習会。年に2回、選手7名をピックアップし、3日間の朝、昼、晩の食事データを提出。カロリー、栄養分などを分析。足りない栄養素などの個別指導を受けたデータに顕著に表れたのはビタミンだった。たんぱく質、炭水化物の量を優先するために、野菜などが不足がちだった。データ分析を選手、保護者と共有することで、食事に対する意識が高まり、お昼のお弁当、自宅での夕食も、バランス良く摂取できるようになった。

試行錯誤しながらも、着実に前進する西武台。河田監督は「できたら、保護者への食育指導の講演会を、オフシーズンに入る前とシーズン前の年に2回開き、みんなで取り組んでいきたい。大人ができることで、選手たちの力を伸ばしてあげたい」と、今後の展開に期待している。選手、スタッフ、そして保護者と一丸となり、強く、たくましいく成長する西武台。激戦区・埼玉県を、力強く勝ち抜いていく。【保坂淑子】