<コロナに翻弄された人たち:2020年を振り返る>

秋田北高の新体操部3年生3人は、幼少期から続けてきた競技で大きく成長した姿を披露した。船川千咲、虻川早莉、高橋佳希で切磋琢磨(せっさたくま)。今年3月の全国選抜大会(兵庫)、8月の全国総体(群馬)での表彰台を狙っていたが、新型コロナウイルス感染拡大により中止になった。正月に誓い合った「自分たちの限界を突破する」の言葉を再確認し合い、大会がなくても自分たち磨きに集中。そして、代替として用意された7月26日の秋田市内での演技会が集大成になった。観戦した保護者や関係者から大きな拍手を浴びた。

リボンの練習に取り組む船川千咲(2020年05月15日)
リボンの練習に取り組む船川千咲(2020年05月15日)

全てを出して、最後は笑って最高の演技

船川は柔軟な体と、しなやかな長い手足でバランスをとり、長いリボンの弧を描く。秋田女王だった母の勧めで、保育園年中から始めた新体操。計14年間の節目を飾る舞台は中止になったが「高校まで3人で一緒に出来た。つらいことも多かったけれど、2人がいたから頑張ってこられた」。仲間へ感謝の言葉を発すると、涙があふれた。

1年時の全国選抜大会で4位となり、最終学年での選抜、総体の3位以内を目指して厳しい練習も乗り越えてきた。正月には3人で集まり「自分たちの限界を突破する」と目標を掲げた。「今までは練習の中で『もう無理』とか限界を決めてしまっていた。赤坂(芳子)先生から与えられたことだけでなく、自分で考えて行動する力もついてきた中での中止は悔しい。でも、大会じゃなくても、その目標は変わらない」。

礼儀、あいさつ、実践力、協調性、多くのことを新体操から学んで、成長した。赤坂監督も「ジュニア時代に個人で成績が良くなくても、結果が出ることを示してくれたのが今の3年生。後輩もその姿を見てきた」と過程にも賛辞を贈った。

リボン練習を行う虻川早莉(左)と高橋佳希(2020年5月15日)
リボン練習を行う虻川早莉(左)と高橋佳希(2020年5月15日)

7月26日にはCNAアリーナ★あきたで演技会が開催され、保護者やジュニア選手、関係者らを前に磨いてきた演技を披露した。船川は「完璧に出来た喜びも大きいので、私は団体が好き。区切りとして、みんなで作り上げた演技をしたい。やってきたすべてを出して、最後は笑って終わりたい」と集大成として臨み、同監督からも「最高の演技」とたたえられた。

18年の福井国体で補欠となった時に感じたのは、支える人の大切さ。卒業後は大学に進学し、競技を続けながらスポーツトレーナーへの夢も抱く。限界突破の道のりは、これからも続いていく。【鎌田直秀】

(2020年8月21日、ニッカンスポーツ・コム掲載)