海に囲まれた国土に住む日本人は、古くから肉よりも魚を多く食べてきました。しかし、調理が面倒で骨が多いために食べにくい、肉よりも価格が高いなどの理由から、1人あたりの魚(魚介類)の年間消費量は2001年の40.2kgをピークに下がり続け、2016年には24.6kgまで減っています。2010年からは肉の消費量の方が上回っています。

良いところがたくさんある魚をもっと食べてもらうために、今回は「魚(魚介類)の魅力」についてお話ししていきます。

魚に含まれる栄養素とその効果~EPA・DHA

魚に含まれる油(魚油)は以前から、動物性脂質でも肉と違って動脈硬化の原因とはならず、身体に良いものだと言われてきました。サバ・ブリ・サンマ・アジ・イワシなどの青魚に多く含まれるEPA・DHAはn-3系不飽和脂肪酸で、血中コレステロ-ルの増加抑制、発ガン予防、老化防止の効果等が報告されています。

EPAは継続摂取すると血管が柔らかくなり、血液循環が良くなって身体のすみずみまで血液が行き渡るため持久力が向上するそうです。また、筋肉痛・筋損傷緩和効果もあるようです。DHAは、EPAが体内で変換され、記憶力向上の効果があるため、「頭が良くなる」と言われています。

魚に含まれる栄養素とその効果~ビタミンD

サケ・ウナギ・アジ・サンマなどに多く含まれるビタミンDは、カルシウムの吸収を促進する、神経伝達や筋肉の収縮を正常にする、認知機能の向上などの働きがある栄養素です。食品中のビタミンDを摂取し、日光の力を借りて活性化すると体内で使えるようになります。

カルシウム同様、日本人に不足しがちな栄養素で、2020年日本人の食事摂取基準で目安量が6.5μgから8.5μgに増えました。魚のほかには、キノコ類に多く含まれます。

魚に含まれる栄養素とその効果~速筋タンパク質

魚のタンパク質はアミノ酸スコアが100と、良質で低脂質であることから注目されています。体内の筋肉には、瞬発力を発揮する「速筋」と持久力を発揮する「遅筋」があり、白身の魚、特にスケソウダラの速筋には、筋肉増加の効果があることがわかりました。

ただ、スケソウダラは少し臭みがあり、脂質が少ないためパサパサして敬遠されることも多いようですが、かまぼこなどの練り製品には多く使用されています。魚を原料とする練り製品は、かまぼこ・ちくわ・さつま揚げ、魚肉ソーセージなどがあります。

切り身だけが魚ではない

ここで話している「魚」は、いわゆる魚の素材(切り身)だけではありません。「魚介類」と言われる通り、イカやタコ、貝類、魚卵、エビなどに加え、ツナや水煮などの缶詰、ほぐし身の瓶詰、すり身を加工した練り製品や魚肉ソーセージなど、水産物はすべて魚の仲間です。そう考えると、魚料理の幅が広がると思います。切り身を調理するだけでなく、自分で使いやすいものを選んで食べるとよいでしょう。

いろいろ使える魚肉ソーセージ

中でも、魚肉ソーセージはスケソウダラだけでなく、他の魚のすり身を使用したものなど色々な種類が販売されており、カルシウムが添加されているもののあります。意外と安価で、常温で長期保存がきくのて常備しておくと便利です。

そのまま食べられるのでカバンに1本入れておけば、お弁当にプラスしたり、補食に食べたりできますし、その日に食べなくても持ち越すことができます。おにぎりのように「朝作って夕方まで持つかな?」といった衛生面での心配もいりません。

料理にも使えます。ハムの代わりにオムレツやポテトサラダの具にできます。スープに入れても、おにぎりの具にしてもいいですし、ソーセージの代わりにアメリカンドックに挟んでもいいでしょう。

今回紹介するのは、「簡単魚肉ソーセージのケチャップ炒め」です。タンパク質が不足しがちな朝食のおかずにピッタリなレシピです。

キャベツ(野菜はなんでもOK)と魚肉ソーセージを切ってフライパンで炒め、ケチャップで味付けるだけ。ケチャップは子どもの好む味ですし、ロールパンに挟めば、“ホットドッグもどき”になります。食パンにのせてチーズをプラス、炒め物に卵をプラスするとタンパク質の摂取を増やすことができます。

女子アスリート/管理栄養士・佐藤郁子