コロナ禍では、いつもより活動量が少ないことによる不安から、食事量を調整するなどして減量する選手も見受けられました。食事からのエネルギー摂取量が十分でない場合、体の冷えを感じる、疲れがとれない、風邪をひきやすいなど、決して良いコンディションとは言えない状況に陥ります。その結果、競技力の低下につながることもあり、早めの対処が必要です。

今回は食べることに抵抗があり、活動量に見合った食事量がとれていないアスリート、摂食障害を疑うようなエネルギー不足の状態のアスリートに対し、気に留めてほしいことをお伝えしたいと思います。

1、自分の状態を把握する

エネルギー不足や摂食障害と診断されたアスリートと話をすると、「自分はしっかり食べていると思う」「そんなにやせていないと思う」「食事を食べなくても体が軽くなって動ける」などと強く訴えることがあります。その口調からは、怒りや憤りを感じることもあるほどです。

そういった時は一緒に、体重の変化やその時々の出来事、気持ちや食事量の状況を時系列に整理していきます。そうすると、徐々に自分の状態が客観視できるようになってきます。

いつ、どんなタイミングで減量を始めたのか、体重はどんな方法で減らしたのか、競技のパフォーマンス、ケガや生理などの体の状況、メンタルの不調の有無など、一度整理してみるといいでしょう。体格指数であるBMIの数値は18.5以下が「やせ」と定義され、体は様々な不調を感じやすくなります。自分の本来の健康が維持される体重はどれくらいか考えてみましょう。

2、今の体で充実した練習ができるのかを考える

アスリートが日々練習する目的は、高い競技力を獲得し、試合でベストパフォーマンスを発揮することだと思います。エネルギー不足の状況で、充実した練習が実施できているのかを考えてみましょう。食事量が少ないと、貧血の症状である息切れがひどかったり、練習中にバテたりすることがあるかもしれません。

また、生理が止まっていれば、女性ホルモンの分泌に支障があるこということですから、生きる上でも健康な状態ではないことがわかります。長期的に生理が止まってしまうと、骨密度の増加にも大きく影響し、年齢を重ねた後で大きな後悔が残ることも多いので、なるべく早めの対処が必要です。

本来望むような練習をするためには、体をどう変えることが必要なのか、そのためには食事をどう変えたらよいのか考えてみましょう。

3、適正な食事量に戻すことを意識する

今までの流れを理解して、減らしすぎてしまった体重や食事量を元に戻そうと決意したとしても、実際は「食事量を元に増やすと急激に太るのが怖い」「食べ始めると過食がとまらなくなりそう」などといった言葉を耳にします。この時に食事のとり方、増やし方で相談したい場合は、個別のサポートが必要なケースが多いので、専門である公認スポーツ栄養士や医療機関の管理栄養士にたずねてみましょう。

全般的に、そういった選手の食事は野菜ばかりに偏っているため、野菜量を今よりやや少なめにし、タンパク質源を不足しないように摂りつつ、主食である炭水化物源を徐々に増やすことで、適正な食事量を摂れるようになります。食事を増やすことに抵抗がある場合は、自分1人で抱え込むとつらくなることも多いので、是非栄養士に相談してくださいね。

エネルギーを使わない選択肢も

また練習を休む、自主練をしないなど、運動量を少なくしてエネルギーを使わないといった選択肢もあります。食事が増やせない場合は、練習頻度や実施時間を軽減させるように調整することも検討しましょう。

自分が考えた方法でどんどんやせていく過程は、とても心地よく感じるようです。しかし、どんな競技も、やせれば良いというのは間違いです。特に中高生の成長期にやせるという行為自体が、体の発育発達のみならず、メンタルの不調に影響を大きく及ぼします。家族が助言しても、アスリートが受け入れないこともありますので、その際はぜひ医療機関に相談してみましょう。

今回紹介するのは、タンパク質もしっかりとれるおかずスープ「キノコたっぷり豚肉の酸辣湯スープ」です。シイタケ、シメジ、エノキ、キクラゲとキノコをふんだんに使い、野菜だけではなく、豚肉や豆腐、卵などタンパク質がしっかり入っています。

体も温まり、酸味のおかげで食欲がなくても食べ進めやすい一品です。春雨を入れると糖質補給になり、エネルギーチャージに役立ちます。酢やラー油はお好みで調整してください。

女子アスリート/管理栄養士・上木明子