近年、「炭水化物抜きダイエット」や「低糖質」などが話題になっており、「炭水化物」「糖質」は「悪者」「取ってはいけない栄養素」のように思っている方も多いと思います。アスリートの中にも、体型や体重を気にして、糖質を多く含む主食の「ごはん(白米)」を特に嫌って食べないアスリートが多くいます。このような傾向はアスリートだけでなく、一般の方にも多く見られ、特に夕食の時に食べないことが多いようです。

しかし、炭水化物、糖質は人間の身体にとって欠かせない栄養素で、不足すると様々な不定愁訴があらわれるだけでなく、過度な制限は身体にとって良くないこともわかってきています(※)。今回は炭水化物、糖質の大切な働きや摂取量の目安などをお話ししたいと思います。

「炭水化物」「糖質」は何が違うのか

「炭水化物」とは、人間の身体を動かす燃料になる「糖質」と、便通をよくする「食物繊維」を合わせたものです。エネルギーがあり血糖値の上昇に関係があるのは糖質で、食物繊維は消化されないのでエネルギーがありません。つまり、「炭水化物抜きダイエット」というのは間違いで、「糖質抜きダイエット」や「低糖質ダイエット」と言うべきなのです。

「糖質」は大きさによって、「ブドウ糖、果糖などの単糖類(1個の分子のみのもの)」「砂糖などの二糖類(分子が2個結合したもの)」「ごはんやパンに含まれる「でんぷん」などの多糖類(たくさんの分子が結合したもの)」に分けられ、多糖類、二糖類は消化されて、最終的に単糖類になって吸収されます。

脳は糖が唯一のエネルギー源

ブドウ糖は肝臓を経由して、血液によって身体のあちこちに運ばれます。私たちはこの糖をエネルギーに変えながら、生命活動および様々な活動を行っています。寝ている間も体温が保たれ、体内で様々な科学反応が起きていますが、それらが継続できているのは糖質などの三大栄養素から作り出されるエネルギーがあるからなのです。

特に脳は糖が唯一のエネルギー源であり、1日に消費するエネルギーの約20%に相当する量の糖を使うと言われています。勉強をするとお腹がすいたり、甘いものが食べたくなるのはそのためで、糖が足りないと集中力が落ちたり、眠くなったりします。これだけでも、糖は身体にとってなくてはならないものであることがわかると思います。

糖質減で水分減少、「痩せた」と勘違い

糖は吸収されると血糖値が上がります。血糖値が上がると、血糖値を下げて安定させるために膵臓から血液中に「インスリン」が分泌されます。インスリンの働き(グリコーゲン・脂肪・タンパクの合成)によって、糖を肝臓(肝グリコーゲン)と筋肉(筋グリコーゲン)に蓄えておいて、運動などの活動に使ったり、使われずに余ってしまった糖を中性脂肪に変えて、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えたりしています。

また、糖は水分保持の働きもあるため、摂りすぎると水分による体重増加やむくみが起きます。逆に摂らなければ水分が減るので体重が減少します。この水分減少を「体重が減った」と勘違いし、「糖質を摂らなければ痩せる」という間違った考えに至ってしまうのです。

ごはんは本当に悪いものなのか

これまでの話で、糖は身体にとって必要不可欠なものであることが再認識できたと思います。では、「ごはん」は本当に悪いものなのでしょうか。

確かに白米は吸収が早く、血糖値が上がりやすい食品です。血糖値が上がれば、脂質の合成も進むため、アスリートにとっては好ましくない食材のように聞こえますが、同時にタンパク質の合成を進めるためにはある程度血糖値を上げないと、タンパク質を多くとっても筋合成はうまく進みません。しかもエネルギーが不足していれば、タンパク質は筋合成ではなく、エネルギー生成の方を優先してしまうのです。

1日に必要な糖質量をごはんで計算

日本人の食事摂取基準2020年度版によると、タンパク質、脂質、炭水化物の割合(PFC比)は総エネルギー(kcal)に対して、15~20%、20~30%、50~65%が適正だとしています。

ということは、15~17歳の女子で1日の必要エネルギーが2400 kcalの場合、炭水化物量は次の量となります。炭水化物は1g=4kcalなので、エネルギー量を4で割り、分量(g)を出してみます。

2400kcal×50%(50/100)~65%(65/100)÷4=300~390

1日あたり300~390gの炭水化物が必要となり、単純にごはんに換算すると800~1050g、1杯150gの普通のご飯茶碗で5.3杯~7杯分になります。肉や魚、野菜など他の食品にも炭水化物は含まれるので、その分を差し引いても700~900gくらいは必要で、補食におにぎり1個を食べたとしても、1食につき200g程度を食べる必要があります。食パンなら6枚切り2枚、うどんなら300g(1と1/3玉程度)になります。

パンや果物はごはんの代わりになるか

白米は食べないけれど、パンや麺は食べるというアスリートは結構います。パンでも麺でもアスリートの食事の基本形(主食+主菜+副菜+果物+乳・乳製品)が作れれば問題ありません。むしろ、パンや麺の方が多く食べられるということであれば、その方が良い時もあります。主食から炭水化物をしっかり取ること、それが大切です。

では、果物はどうでしょうか。果物に含まれる「果糖」は単糖類で吸収が早く、血糖値は上がりやすいと言えるでしょう。また、果物で必要なエネルギー量を摂取しようと思うと、かなりの量を食べる必要があります。ただし、練習の前の補食にはすぐに使えるエネルギーを補給するという観点から適していると言えます。臨機応変に使い分けてください。

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