冬の中でも最も寒い2月に入りました。気温の低いこの季節は、手足が異常に冷たくなったり、入浴後もすぐに体が冷えてしまったりする選手が多いと思います。今回は女性にありがちな「冷え」についてお話しします。

「冷え」は、本来働くべき体温調節機能がうまく働かず、発熱や血流量が少なくなるために手足などが冷えてしまう状態のことを示します。気温とは関係なく体が温まらないので、真夏であっても冷えの症状は現れます。

原因1、筋肉量が少ない

原因の1つ目は「筋肉量の少なさ」です。筋肉量が少ないと体内で熱を生産することができず、うまく体を温められません。女性は男性よりも筋肉量が少なく皮下脂肪が多いので、元々熱を作る力が弱いのです。

女性に多い皮下脂肪は、内臓が冷えないようにする「断熱材」のような役割がありますが、一度冷えると温まりにくい性質を持っています。また、「人間の体温のうち6割は筋肉による熱産生によるもの」と言われるくらい、筋肉には熱を作り出す力があり、筋肉量が多ければ基礎代謝も上がります。女子アスリートは体脂肪も必要ですが、それぞれの競技に適した筋肉量をつけて、アスリートとしての体格を確保することが必要です。

原因2、食生活の偏り

2つ目は「栄養が偏った食生活によるエネルギー不足」です。私たちの体は1日24時間、1年365日、体温を維持するために小さな火を燃やし続け、「体温」という熱を作り出さなくてはなりません。

熱の原料である三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)が不足すると、熱を作り出せず、体温が低くなります。三大栄養素を熱に変えるビタミン、ミネラルが不足しても、熱は作り出せません。鉄欠乏症貧血から手足が冷える状態を作ってしまうこともあるのです。

アスリートは運動によるエネルギー消費量が多いため、元来必要なエネルギーを食事から摂ることが難しい傾向にあります。それに加えて、極端な食事制限によるダイエットによって一層、エネルギー不足が進むこともあります。私が、栄養指導する選手に「手足冷えない?」と聞くのは、エネルギー不足に陥っていないかを問診するためです。

食事の後は、消化した栄養素が分解される時に熱を発生させる(食事誘導性熱代謝)ので、体温が上がります。必要なエネルギーに見合った食事をしっかり摂ることは、代謝を上げるためにも良いことなのです。

原因3、自律神経の不調から

3つ目は「自律神経の不調」です。自律神経は呼吸、血圧、脈拍、体温などをコントロールしていて、交感神経と副交感神経からなるものです。この2つのバランスが崩れると、体温調節がうまくいかなくなります。

自律神経が乱れる原因にはストレスや寒暖差がありますが、女性ホルモンの乱れもその1つ。そもそも緊張状態が続くことが多いアスリートは交感神経が長時間働くため、自律神経のバランスが崩れてしまいがちなのです。

このように様々な原因によって、冷えは生じます。しかし、冷えの原因は特別なものではなく、アスリートに適した体作りやエネルギー不足の改善によって、予防・解消が図れるものです。

食物によって冷えを改善する方法もないとは言えませんが、ある一定の食品を食べるよりも、日々のコンディショニングの1つとして、冷えを根本から解消して行った方がよさそうです。

保温性に優れるスープポット

今回、紹介するのは「スープポットを使ったサムゲタン風野菜スープ」です。スープポット(スープジャー)は保温性に優れているので、朝作ったものがお昼も温かいまま、食べることができます。特に気温が低いこの時期は温かいスープが重宝しますし、逆に夏場は冷たい麺類などにも活用できます。

野菜などは完全に火を通さなくても保温している間に加熱が進みますので、作る時間が短くてすみます。今回はスープですが、ご飯を入れればその名の通り「サムゲタン」になります。

生の鶏肉の代わりに「サラダチキン」を使ったので、火の通り具合の心配もありません。余ったサラダチキンは、サラダなどにも利用できます。

女子アスリート/管理栄養士・佐藤郁子