近畿大学東洋医学研究所は、武田卓所長を中心とした研究チームが、女子高校生をはじめとする若い女性の月経痛(月経の直前から月経中までに起こる下腹部や腰の痛み)や月経前症候群(注1、Premenstrual Syndrome=以下PMS)が、コロナ禍によるストレスの影響で悪化していることを世界で初めて明らかにしたと発表した。

研究チームはコロナ禍の2020年12月、2つの高校の女子高校生1351人を対象に、月経周期や初経等の月経の状態、月経前の精神・身体症状や月経痛に関する重症度、コロナ恐怖尺度、コロナへのPTSD症状を評価する自記式アンケート調査を実施した。その結果、以下の3点が分かった。

(1)5.6%(49人)がPTSD症状を示すこと
(2)ストレス症状を示す生徒では、パンデミック前と比較して、月経痛・PMSが悪化したこと
(3)新型コロナウイルスによるPTSD症状がPMSの有意かつ独立した増悪因子となること

コロナ禍によるストレスが、特に思春期女性への影響が大きいことは分かっているが、これまで月経痛・PMSとの関連は示されていなかった。月経痛やPMSは月経随伴症状(注2)の代表的な疾患で、ストレスによって悪化し、女性の生活の質(Quality of life、以下QOL)を著しく下げる。

このことから研究チームは「コロナ禍が長期化するなかで、この結果は思春期女性の健康管理を適切に行うための一助となる」と見ている。また、PMSやPTSDの症状は生徒自身や周りの認知が難しいことから、表面に現れやすい月経痛を手がかりに、背後に隠れているかもしれないPMSやPTSDについても、十分配慮する必要性があるとしている。

※注1:月経前症候群=月経前、3~10日のあいだ続く精神的あるいは身体的症状で、月経とともに減少または消失する症状のこと。イライラ・おちこみ・不安感といった精神症状と、腹部膨満感・乳房症状といった身体症状が認められる。
※注2:月経随伴症状=月経痛や月経前症候群(PMS)といった月経に関連して現れる症状。