競泳女子の池江璃花子(20=ルネサンス)が、退院からわずか1年4カ月で東京五輪の切符を手にした。周囲を驚かせる復活劇だが、小学校時代の恩師で、東京ドルフィンクラブの清水桂コーチ(46)は「璃花子らしい」と言う。入院から退院、そして復帰ロードを静かに見守っている恩師が、池江の素顔について、語った。

女子100メートルバタフライで優勝し涙する池江(撮影・鈴木みどり)

清水コーチは、19年12月が忘れられない。まだ入院しているはずの池江から電話がかかってきた。「もう家にいま~す」。「えっ」「クラブにいきます」。退院直後の池江が都内の東京ドルフィンクラブまでやってきた。「スーパーモデルみたいに細くて」と清水コーチ。池江が息を切らせて、2階まで階段を上がる姿が目に焼き付いている。「いきなりやってきて。天真らんまん。こっちが気を使いますよ」と苦笑いする。

16年6月、池江璃花子が小学3年時に描いた絵を手にする恩師で東京ドルフィンクラブ・コーチの清水桂さん

その8カ月後には復帰レースを泳いだ。9月には復帰祝いで食事をした。ヘルシーな親子丼と焼き鳥。まだ少し細い元教え子は「前の自分よりも強くなっている」とさらりといった。「病気をしたことでいろんな視野が広がった。似た病気をしている人がいて、その中でも自分は頑張んなきゃいけない」。その言葉に清水コーチが「そっか。じゃあ、もうお前、世界新じゃね」と言うと、穏やかに笑っていたという。「2年前は闘病生活で。寝ていて、ぼろぼろで。昨秋に『私、タイム(持ちタイム)ないもん』といっていた。今は第2の池江璃花子として、自己ベストを重ねていっているところだと思う」。

2月の東京都オープンでは会場で100メートルバタフライを見て「正直、ちょっと時間がかかるのかなと思った」。しかし翌日に50メートルバタフライで優勝した。しかも19年世界選手権決勝進出相当の好タイムだった。「あの50メートルでぞぞぞっときた。『あ、璃花子だあ!』と思った。彼女はどんな試合でも順位にこだわる。バチッとスイッチが入ると全然違う。彼女のモチベーションは異次元。そういえば璃花子は白血病だったんだよね、そういえば寝込んでたよね、そういう笑い話になっちゃうのかな」と明るく話した。【益田一弘】

◆池江璃花子(いけえ・りかこ)2000年(平12)7月4日、東京都生まれ。15年世界選手権で中学生として14年ぶりに代表入り。得意は100メートルバタフライで自己ベスト56秒08。16年リオデジャネイロ五輪5位、18年パンパシフィック選手権で主要国際大会初優勝。同年ジャカルタ・アジア大会で日本勢最多6冠で大会MVP。19年2月に白血病を公表し入院。同12月に退院。171センチ。

(2021年4月5日、ニッカンスポーツ・コム掲載)