<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(18)>

禅僧、精神科・心療内科医の川野泰周さん。仏教の考え方では外に何かを求めることはしない。

「心の平穏を作り出すのは自分です。仏教では外の世界のものに対して感謝し、与えることを重んじます。求めるのではなく与えること。これが自らに幸せをもたらすと説きます」

与えるものがない人はどうすればいいのか。

「その答えもまた自分の中にあります。自分のともしび、すなわち自灯明(じとうみょう)といい、いまの自分を受容していくことがその答え。つまり、マインドフルネスなんです」

自らを受容することこそ心を満たす。瞑想(めいそう)あるいは、いまある生活の中の行為をひとつひとつ丁寧に行うことを積み重ねていけば自分を受容できるようになると説く。

「自己存在を受容できるようになった方は、外に何かを求める必要がなくなります。すでに満たされているからです。しかも自分が満たされているこの幸せを、ほかの人におすそ分けしてあげようと考える。これが本当の“自利利他円満”の精神です。そのためにまず、自分の心を満たしてあげるためにできることを、自らが講じることです」

なによりもまずは自分の存在を慈しむ。自分の存在を大事にする。

「自ら命を絶つ人があとを絶たない時代です。自分をいたわる気持ち。たとえ絶望することがあってもあなたが生きていることが巡り巡って必ず誰かの助けになっていると感じてもらえたら」。

(2020年11月13日、ニッカンスポーツ・コム掲載)