<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(13)>

禅僧で精神科、心療内科医の川野泰周さん。マインドフルネスに基づいた方法を紹介している。

「“歩く瞑想(めいそう)”のほか、いつもスポーツジムでランニングマシンを使って走っている方なら、10分間走るうちのわずか1分間で結構なので、足の感覚だけに注意を向けて走ってみてほしいです。“走る瞑想”を手軽に実践できると思います」

ひとつの行為に注意を向け、その感覚に対峙(たいじ)することこそマインドフルネス。

「食べることもおすすめです。ひと口だけで良いから、大切に味や香りだけに注意を向けて食べてみましょう。ほかのことを考える余裕がなくなるため、動きの中で行う瞑想は比較的取り組みやすいと思います」

日常の喧騒(けんそう)の中での“瞑想”自体が画期的といえそうだ。一方、ゆったり落ち着いた自然に囲まれて過ごしたいという人にこうアドバイスする。

「自然の中で一定時間座っているのと都会の雑踏でを比べると、心の健康度が大きく変わるという心理実験があります。自然の中で過ごすことで心が回復するという効果は数々の研究で示されています。私たちはもともと大自然という森羅万象の一部。人工的なものがない場所に身を置くことだけでマインドフルネスになります。単に森林浴をすればよいのではなく、スマホをずっと見ていたらその効果は激減してしまうでしょう」

風に揺れる木の葉が擦れ合う音、鳥のさえずりに耳を傾け、心の感じるまま身を任せることがコツだ。

(2020年11月1日、ニッカンスポーツ・コム掲載)