<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(11)>

あるがまま自然な姿で-。菩提(ぼだい)樹の木の下で悟りを開いたブッダの教えのひとつが「中道(ちゅうどう)」だった。

禅僧、精神科・心療内科医の川野泰周さんはいう。

「仏教の悟りの知恵が現代の言葉と実践法に熟成されたものがマインドフルネスなのです。悟りをゴールとしてしまうと、おごりが出ることに仏教は警鐘を鳴らしています。つまり、悟りをゴールにするのではなく正しい道を歩んでいると自然に悟った人になっていく。(仏教の教えは)あるがままのいまを受け入れていくことです」

コントロールしようとするのではなく、自分のままでいることを受け止められると心は波立たなくなると川野さん。そうした考えでマインドフルネスをすることが肝心という。

「自身のマインドフルネスがどのレベルまで上がったかといった、まるで逆上がりでも覚えるような意識でやっている方もおられますが、効果ばかりが気になっては瞑想(めいそう)にならなくなってしまうことを話しています。外からみれば瞑想のかたちはしているけれど、頭の中では“もっと集中力を上げるぞ、能力を引き出すぞ”と思ってやるのではなかなか効果が出ません」

元気になりたい、心を回復させたい-きっかけはさまざまだがマインドフルネスの瞑想を始めたらその「意図」は手放すように。

「ただ、いまの呼吸にだけ注意を向ける、そういったことが肝要です。そのために繰り返し自分の心をチェックすることが大切です」

(2020年10月27日、ニッカンスポーツ・コム掲載)