<医療ライター・しんどうとも「メンタル回復法」(1)>

コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。私たちは感染予防で最善の注意を払いながら毎日を過ごしています。ストレス社会の今、心と体の健康状態をいかに維持するか、医療ライターのしんどうともが考えていきます。

集中力の低下、熟睡できないのは脳が疲れているサイン

日々のストレスに加えて、今年はコロナ禍で急激な環境変化に悩んでいる人は少なくない。こんな時代に心を穏やかにするヒントを専門家らに聞いた。

川野泰周さんは臨済宗建長寺派の禅寺の住職であり現職の精神科・心療内科医という異才。自身の著書「心と身体の正しい休め方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)に詳しいが、禅僧・臨床医として何を伝えたいのか。川野さんは現代人の疲れは「脳」の疲れだと指摘する。

「脳内の、いったい何が疲労物質かはいまだ証明されてはいないが、どう考えても身体ではなく精神的な疲れ方をしている人が多いのです。それは、寝ても休んでも疲れが取れないといったことからわかります」

たとえばうつ病の患者の多くがそうした状態であり、そこには前触れがあるという。

「集中力が低下した、熟睡感がないなど、普通は体が疲れていたらぐっすり眠れるものが、脳が疲れていると逆に眠れなくなる。ほかにも『自責的な気持ち』(自分を責める)になったり、おいしいものを食べてもおいしいと感じられない、あるいは楽しいはずの趣味が楽しくなくなってきます。そうした兆候がいろいろと積み重なっていくわけで、これを専門的にはアンヘドニアと呼んでいます。こうしたことはみな、『脳が疲れている』といっても過言ではないでしょう」

まずは脳の疲れこそ正体だと自覚してみよう。

(2020年10月14日、ニッカンスポーツ・コム掲載)