球児よ、人生は、まだこれからだ-。日本高野連は20日に運営委員会を開き、夏の甲子園の開催可否を協議する。その後の理事会を経て、午後6時からの会見で今春センバツに続く中止を発表する見込みだ。

各都道府県大会は開催の可能性を残すが、コロナ禍により3年生は全国の舞台を奪われたまま、卒業を迎えることになる。そんな彼らに、どんな言葉をかければいいのか。日大三(東京)・小倉全由監督(63)が思いを語った。【取材・構成=保坂淑子】

日大三・小倉全由監督(2019年7月24日撮影)
日大三・小倉全由監督(2019年7月24日撮影)

今日、どんな結果になろうとも、選手たちに伝えたい思いはただひとつ。今もそしてこれからも、一生懸命だぞ、ということ。君たちがやってきたことは絶対にプラスになるんだってことを話したい。

大会開催の可否で、気持ちが揺れ動いていることだろう。もし、中止になったら…。自分がやってきたことは、意味のないことなのかな? いいや、そんなことは絶対にない。小さい頃から、甲子園出場を目標に野球に打ち込んできた君たちにとって、きっと目の前の目標がパッと消えて、何に向かって歩いていいのか、分からなくなるかもしれない。でも、大会があってもなくても、甲子園を目指して頑張ってきた日々は、みんなの人生のプラスになるんだ。

自分は関東第一で監督をしてから、1度、野球を離れた時期があった。その時も、いつかもう1度、高校野球の現場に戻りたいという思いだけは持ち続け、今がある。そう、人生はあきらめちゃダメなんだ。どういう結果になろうとも、今こそ、勇気を持って前向きに1歩前に出る。今日は、そんな大切な日になるはず。指導者としては、選手と同じ目線に立ち、同じ気持ち、飾らない言葉で声をかけてあげたいと思う。

昨年の夏の甲子園開会式(2019年8月6日撮影)
昨年の夏の甲子園開会式(2019年8月6日撮影)

今、大事なことは、選手たちの将来。そして命をどう守るのか。選手たちは元気でも、その後ろには家族がいる。どこで感染するか予想ができないことも、考えなくてはいけなくて本当に難しい。命ばかりでなく、こうして子供たちの希望も奪う。見えない敵との闘い。コロナ…本当に…憎い。

先日、日大三野球部では授業で使っているオンライン会議システム「Zoom」を使って、1年生の自己紹介をして2、3年生と顔合わせをした。新入部員たちは、皆、口々に「日本一になるためにここに来ました」と元気に話してくれた。2、3年生も「うちは上下関係がないから、安心して。一緒に野球をしよう!」と1年生に語りかけてくれた。みんなと早く練習をしたい。思い切り練習させてあげたい。そんな思いにさせられた。だから、チームが再開した時には、いい顔をしてグラウンドに集まってくれ、と話をしたばかりだ。今日、どんな結果になっても、選手たちとはいい顔で、ともに汗を流したこのグラウンドで会いたい。そう願っている。

(2020年5月20日、ニッカンスポーツ・コム掲載)