新型コロナウイルス感染の影響で、センバツに続き、今夏の甲子園大会の中止が検討されていることが判明した。

監督としてPL学園(大阪)を春夏6度の甲子園優勝に導いた中村順司氏(73)は、コロナ禍に振り回される球児たちに思いを寄せ「明日」に向けたメッセージを送った。

PL学園監督時代の中村順司氏
PL学園監督時代の中村順司氏

大変な1年になった。

正式発表を待つことにはなるが、夏の甲子園も中止となれば、このコロナ禍はやりきれない。球児の気持ちを思えば、本当につらい。だが、野球も人生もこの夏で終わらない。次の世界が待っていることを思い出してほしい。

大学、社会人、プロを目指す3年生部員は、攻守の技術を基本から見つめ直す絶好の機会だ。目の前の試合に勝つことから目標を切り替え、バットの握り方、捕球の仕方から基本に返って練習してみよう。

PL学園を指導していたころ、ぼくは「30歳まで野球をやろう」と選手たちに伝えた。その気持ちでやれば、35歳でもやれる。福留孝介は43歳になった今も、阪神で頑張っている。これからの頑張りは必ず、この先に生きてくる。

この夏で野球を終えるつもりでいた部員も多いだろう。ただぼく自身は、どの部員にも高校で野球を終えてほしくない。野球には、勝ち負けを超えた素晴らしさ、奥深さがある。それを知る機会を、18歳で手放さないでほしい。学業専念や就職などの事情で区切りをつけるつもりでいたとしても、時間が許せば余暇を利用して続けてほしい。

昨年の夏の甲子園開会式(2019年8月6日撮影)
昨年の夏の甲子園開会式(2019年8月6日撮影)

昨年、PL学園の教え子たちと出場した「マスターズ甲子園」で、在学中は甲子園に出られなかった教え子と試合をすることができた。野球への思いを持ち続けてくれているんだな、とうれしかった。好きで始めた野球、支えてくれた家族に応えようと頑張ってきた野球を通じて人生を切り開いていく。いつの日か、今年の経験を人生に生かす。そういう球児たちでいてほしい。(PL学園元監督)

(2020年5月!6日、ニッカンスポーツ・コム掲載)