<深掘り。>

#野球好きな人々へ 玄人好み、多くのプロ野球選手にも愛用される「スラッガー」のグラブ。独自の「湯もみ型付け」という職人芸で、手元に届いた時から違和感なく使用できる。少年時代のグラブを持参し、久保田運動具店東京支店の松山英則さん(38)と山田佑紀さん(32)から、手入れの仕方を学んだ。現役のプレーヤーはもちろん、進学や就職を機に野球をやめた人たちも必見です!

※この取材は、関係者の方々との距離などに配慮して行いました。

~湯もみ型付けの過程~

【ばらし】
① スラッガーのグラブの型付けは、完成形のグラブを「ばらす」ことから始める。グラブを傷つけないように加工したペンチを使用し、ひもを外していく。

加工したペンチを使い、ひもをほどいていく
加工したペンチを使い、ひもをほどいていく

② グラブの左半分が外し終えたら、親指部分から土手にかけて入っている「親指の芯」を抜き取る。手際のいい作業で3分半ほどで作業完了。

加工するために親指の芯が抜かれたグラブ
加工するために親指の芯が抜かれたグラブ

【芯の加工】
③ グラブの操作性を高めるために、特別な加工を行う。内容は非公開。

【戻し】
④ 加工の終わった親指の芯をグラブに戻す。

加工した芯を戻し、ひも通しを使い、ほどいたひもを締める
加工した芯を戻し、ひも通しを使い、ほどいたひもを締める

⑤ 再びひもを通す。その際に「一番(動きに)制限がかかる」土手部分のひもは通さず、抜いたままに。「固定するとその部分だけ動かない。必死にやっていたら打球によって、いろんな形で捕る。その妨げにならないように」(山田さん)。スラッガー特有の土手部分に小さな穴が開いているのはこのため。

操作性を高めるために加工した芯を戻したグラブ。土手のひもも外しさらに使いやすくしてある
操作性を高めるために加工した芯を戻したグラブ。土手のひもも外しさらに使いやすくしてある

【湯もみ型付け】
⑥ 熱めのお湯にグラブをくぐらせる。決まった秒数などはなく、職人の感覚。大きさ、形ともに変わらず、全く同じように見えるグラブでも、革の硬さは異なる。お湯で革の繊維を柔らかくする。

グラブを水気を取る山田佑紀さん
グラブを水気を取る山田佑紀さん

⑦ お湯からグラブを上げ、強く押して水気を取る。

⑧ もみほぐしながら形を整えていく。

湯通ししたグラブを揉む山田佑紀さん
湯通ししたグラブを揉む山田佑紀さん

⑨ 木製のハンマーでグラブをたたき、柔らかくしていく。

湯通ししたグラブを木づちで叩く山田佑紀さん
湯通ししたグラブを木づちで叩く山田佑紀さん

⑩ ボールを使い、捕球面を整える。その際に注文者の手の大きさや厚みを見て、型を付けるのがポイント。手の小さな人のグラブの場合は、浅めに手を入れなじませていく。完成後は関節がついているような仕上がりとなっている。

湯通ししたグラブをボールを押し当てて揉む山田佑紀さん
湯通ししたグラブをボールを押し当てて揉む山田佑紀さん

※⑥~⑩が最も重要な工程。

【乾燥】
⑪ 乾燥機に入れ、数日間乾燥させる。

もみほぐしたグラブを乾燥に入れて、数日間乾かす
もみほぐしたグラブを乾燥に入れて、数日間乾かす

【もみ】
⑫ 乾燥後のグラブを霧吹きでぬらし、革に蒸気が浸透する程度に蒸す。決まった時間はなく職人の感覚で状態を見極めて調整。

⑬ ⑩で付けた型に沿い、ボールなどを使いさらに柔らかくしていく。状況に応じて⑪~⑬の作業を繰り返して完成。

乾かしたグラブに霧吹きで吹き掛けて、30秒から1分間蒸す。温度は80度以上
乾かしたグラブに霧吹きで吹き掛けて、30秒から1分間蒸す。温度は80度以上

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