「ボクシングトレ」で復活の兆しが見えた! 広島薮田和樹投手(27)が22日、マツダスタジアムのマウンドで投球練習を行った。昨秋から瞬発力の向上を求め、取り入れたボクシングの効果を実感し、復活への手応えを得ている。最高勝率を獲得した17年の後は苦戦が続いていた右腕が異種トレで再び輝きを放つ。

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薮田が本拠地のマウンドで100球の熱投を見せた。「内容が全然(ダメ)だったので、それぐらいの球数になった」と渋い表情だったが、球の質は間違いなく向上している。

マウンドで投げ込む薮田和樹(撮影・加藤孝規)
マウンドで投げ込む薮田和樹(撮影・加藤孝規)

復活の鍵を握るのは、異種トレーニングだ。17年最高勝率右腕は、昨秋から自主トレにボクシングを導入。グローブを手に装着し、サンドバッグやダミーミットをめがけ、鋭いパンチを繰り出す。師事しているトレーナーがボクシング経験者だったこともあり、瞬発力を高めるトレーニングの一環として取り入れた。「投げ方もどちらかというとパンチに近いので」。独特なテークバックからパンチのように繰り出す投法ということもあり、本格的に取り組んだ。

昨季まではウエートトレーニングによる筋力、体重の増量にこだわり、出力を上げようとしていた。「それを続けてても、なかなか状態が上がってこなかったので、ちょっと変えてみようと。投球につなげないと意味がないと思った」。より投球動作に近い動きをイメージし、スピードを意識したトレーニングに重点を置くことに切り替えた。

ボクシングトレーニングの効果について、球界関係者がこう説明した。「ボクシングは動きの連動性を鍛えることができます。釣りに例えれば、さおを投げる時に手首の動きを止めることで、先端が走って遠くまで飛ばせる。そういう原理と一緒だと思います」。投球も打撃でも、下半身の踏み込みによる急停止によって、上半身に力が伝わるという部分でボクシングと共通する点がある。「動きの連動性と持久力も鍛えられる手っ取り早いトレーニングだと思います」と同関係者は話す。

マウンドで投げ込んだあと、外野で走り込む薮田和樹(撮影・加藤孝規)
マウンドで投げ込んだあと、外野で走り込む薮田和樹(撮影・加藤孝規)

昨秋から現在でも週に2度のペースで継続して実施している。2月の春季キャンプ終盤からは投げるたびに首脳陣の信頼を高めた。新たな取り組みによる効果に薮田は「結構つながる部分はあったと思います」と手応えを感じている。ボクシングで磨いた直球を武器に、完全復活へ突き進む。【古財稜明】

(2020年4月23日、ニッカンスポーツ・コム掲載)