女子ゴルフで昨季ツアー初優勝を果たした稲見萌寧(20=都築電気)が、夢だった東京オリンピック(五輪)出場への思いを封印し、頂点を目指す。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、今季の国内女子ツアーはすでに開幕戦から5戦連続中止が決定。それでも休みなしで練習を続け、再開に備えている。

1学年上は渋野日向子ら「黄金世代」と呼ばれ、1学年下もプロ、アマですでに実績のある00年度生まれの「ミレニアム世代」「プラチナ世代」と呼ばれる。女子プロ豊作の先輩と後輩に囲まれるが、稲見は堂々と頂点を目標に掲げた。

稲見 はざま世代ですよね(笑い)。でも、どの世代でも、私が輝けばいいという思いです。世代ではなく「私がダイヤモンドになる」と。強い人が何人もいる世代より、成績が上であればいいと思っています。

得意のアイアンを手にポーズを決める稲見萌寧(撮影・丹羽敏通)

黄金よりもプラチナよりも、輝く存在になることを目指している。それでも、国内外のツアーが相次いで中止となり、一時は目標を見失いかけたという。特にプロでは初めて海外での試合出場となるはずだった、2月のホンダLPGAタイランド(タイ)の中止は、大きな転換期となった。

稲見 ショックでした。初めての米女子ツアーで、すごく楽しみにしていたので。自分が今、どのぐらいのレベルか、感じたかったのもありますし、東京五輪出場を目指していたので。

世界中で試合が中止、延期の現在は凍結されているが、五輪出場権は世界ランキングに応じて与えられる。現在59位の稲見は日本人女子4番手。同3番手で14位の鈴木愛とは大きく開きがある。1カ国4人まで出場権が与えられる15位以内を目指すには、好成績で大きく順位の上がる米ツアーでの活躍が不可欠だった。

稲見 タイの試合がなくなった後は、やる気が出るまでに1週間ぐらいかかりました。五輪の道が遠ざかったなと戦意喪失で、練習しても気合が入らず…。でも、コーチに「やる気を出せ」と、怒られちゃいました(笑い)。それからは、国内のメジャー優勝、複数回優勝しようと、目標を切り替えて立ち直りました。

五輪の延期で代表選考方法は未定、世界ランキングを上げるチャンス(期間)が広がる可能性もある。だが稲見は「目標でした」と笑って話し、すでに五輪への思いは封印している。

稲見 今は休みはありません。いつ試合が再開されても大丈夫なように。再開されたら毎週勝つ勢いで。

優勝インタビューで涙を流す稲見萌寧(2019年7月28日撮影)

長所を伸ばすことに重点

コロナウイルス対策も兼ね、トレーニングはマスクを着けて行っている。高地トレと同様に酸素の少ない状況で心肺機能が高まり、体力強化を実感。技術面では短所のアプローチとパターに、以前よりも時間を割いている。それでも元来は飛距離を求める豪快なスタイル。「両方求めると両方とも中途半端になる。やっぱりショットが好き」と、長所を伸ばすことに重点を置いている。もちろん思い描くのは大観衆の前での優勝。「お客さんがいると、やっぱり盛り上がりますから」。何よりも今は、通常開催される日が来ることを願っている。【高田文太】

◆稲見萌寧(いなみ・もね) 1999年(平11)7月29日、東京・豊島区生まれ。9歳でゴルフを始め、12年関東小学生選手権、14年関東中学生選手権、15年東日本パブリックアマ優勝。ツアーは15歳で出場した15年中京テレビ・ブリヂストン10位、16年三洋電機レディース8位。18年プロテストに高卒で1発合格。昨年のセンチュリー21レディースで初優勝。昨季は賞金ランキング13位。168センチ、58キロ。

◆女子ゴルフの五輪代表争い 今夏に五輪を開催していた場合、6月末の世界ランキングに応じ、各国上位2人に出場権が与えられる予定だった。同ランキング15位以内に3人以上いる国は、最大4人まで出場権を得る。現在、世界ランキングは凍結されており、日本勢は畑岡奈紗が4位、渋野日向子が12位、鈴木愛が14位で出場権獲得圏内につけ、稲見が59位、河本結が62位、上田桃子が63位で続いていた。五輪延期による選考基準の変更は未定。

(2020年3月30日、ニッカンスポーツ・コム掲載)