<ラグビー流 Education(18)>

「ラグビー流 Education」も、今回が最終回。名門・桐蔭学園高(神奈川)を率いる藤原秀之監督(51)は、ジュニア世代に次のようなメッセージを送ります。

いろんなことにチャレンジ、熱中を

今は大人が何かと守りに入ってしまいがち、「安定」を求めて「ほどほどでいい」という傾向を感じます。でも、子どもたちの将来はどうでしょうか。

体格では劣るが、日本代表は「自分たちの強み」を磨き、武器にすることで格上の相手を撃破していった
体格では劣るが、日本代表は「自分たちの強み」を磨き、武器にすることで格上の相手を撃破していった

教え子の1人で今は経営者をしている者は「自分で何か考えてやっていかないと。会社におんぶに抱っこの人は、仕事がなくなっていくだろう」と言ってました。ある大学教授は「高学歴で企業に入っても(将来が)保証されるわけではなくなる」とも話します。上司から指示されて仕事をする時代じゃなくなる。安定していると思われていた企業や組織、制度が、いつ崩れるかわかりません。

そんな中、生き残るには「自分は何ができるか」を明確にする、自分の強み、武器を持つことが大切だと思います。「ほどほどに」「平均点」ではなく、「誰にも負けないような」「突き抜けるほどの」個性や力が武器になります。

藤原秀之監督
藤原秀之監督

例えばラグビーのラインアウト。相手に「何をやってくるか分かっていても、かなわない」と思わせるほど突き抜けてしまえば、大きな武器です。序盤からラインアウトを支配し続ける。ペナルティーの後、相手は「タッチキックから(強みの)ラインアウト」を想定して対応してくる。そこで裏をかき、いわゆる「PからGO」、すばやくボールを回す“奇襲”でトライを狙うこともできる。大きな武器を持つことで、新たな強みも生まれます。

ある大企業のトップの方が「安定は衰退の始まり」と言いました。個人的にとても共感しました。私は安定よりも、常に前進すること、他分野の方に会って教わること、柔軟性を持つこと、自己研磨を心掛けています。若い人にはいろんなことにチャレンジ、熱中してほしいです。

◆藤原秀之(ふじわら・ひでゆき)1968年(昭43)東京生まれ。大東大第一高でラグビーを始め、85年度全国選手権でWTBとして優勝。日体大に進む。卒業後の90年に桐蔭学園高で保健体育の教員、ラグビー部のコーチとなり、02年から監督。同部は本年度で5大会連続18度目の全国選手権出場。決勝進出6回、10年度優勝時のメンバーに日本代表の松島幸太朗ら。今や「東の横綱」と呼ばれている。

(2019年12月29日、ニッカンスポーツ・コム掲載)